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2025.10.28

不動産相続とは?よくあるトラブルと対策方法、基本の流れと注意点を解説

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住み替えのノウハウ
  • # 相続

不動産を相続する場合には、複雑な手続きに追われるだけでなく、相続人同士の揉め事や思わぬトラブルに直面するケースも多いです。特に、名義変更や相続人の調査、相続税の申告といった手続きを理解しないまま進めると、将来的に大きな問題へとつながることもあります。

この記事では、不動産相続の基本的な流れから注意すべきポイント、さらによくあるトラブルとその対応策について解説します。

  1. 不動産相続とは?
  2. 不動産相続の基本的な流れ
  3. 不動産相続でよくあるトラブルと対策方法
  4. 相続した不動産はすぐに売却できる?
  5. まとめ

不動産相続とは?

不動産相続とは、亡くなった人(被相続人)が所有していた土地や建物、マンションなどの不動産を、その相続人が引き継ぐことを指します。

なお、相続については法律上の権利であり、亡くなった人の「プラスの財産」だけでなく、借金などの負債や債務である「マイナスの財産」も含めて、次の世代へ承継する手続きを意味します。

不動産は現金のように簡単に分割できない性質があるため、遺産分割を巡るトラブルに発展することで、相続手続きがスムーズに進まなくなってしまうケースも多いです。

また、不動産を相続人同士の共有名義とする場合には、相続後の運用や売却が難しくなることもあるため、将来を見据えた慎重な対応が欠かせません。

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不動産相続の基本的な流れ

具体的な不動産の相続手続きについては、被相続人が亡くなってから相続登記の申請や相続税の申告・納付に至るまで、いくつかの工程に沿って進められます。

ここでは、不動産相続の基本的な流れと、各ステップでの注意点について解説します。

死亡届を提出する

相続は、被相続人(亡くなった人)の死亡によって始まります。相続が発生した場合には、不動産相続を含むすべての相続手続きの最初のステップとして、まずは、死亡の事実を市区町村に届け出る必要があります。

死亡届については、原則として、死亡の事実を知った日から7日以内に提出しなければなりません。ただし、国外で死亡が確認された場合は、その事実を知ってから3ヵ月以内でも提出可能です。

提出先は、死亡者の死亡地、本籍地、または届出人の所在地を管轄する役所です。届出人になれるのは、親族や同居者、家主・地主、家屋・土地の管理人、後見人・保佐人・補助人などであり、必ずしも相続人である必要はありません。

なお、死亡届を提出する場合には、死亡診断書や死体検案書の添付が必要となるため、添付漏れのないように注意が必要です。

遺言書の有無を確認する

相続手続きを開始するにあたり、最初に遺言書が残されていないかを確認することが重要です。遺言書がある場合には、原則として、遺言書に記載された内容にしたがって遺産の分割を行います。ただし、相続人全員の合意があれば、遺言書とは異なる遺産分割も可能です。

遺言書には、主に「公正証書遺言」と「自筆証書遺言」があります。

▪公正証書遺言
公証役場にて、公証人の立会いのもと作成するため、内容の信頼性が高く、形式的に不備となるリスクが極めて少ないです。また、作成した遺言書の原本は公証役場に保管されるため、偽造・改ざんのリスクがありません。

▪自筆証書遺言
被相続人自身が生前に書いた遺言書です。自筆証書遺言に基づいて手続きを行う場合、偽造や改ざんを防ぐために、家庭裁判所の検認手続きが必要となります。もし、検認を受けずに遺言書を開封した場合には、過料が課される可能性があるため、取り扱いには注意が必要です。

ただし、2020年7月以降に始まった「自筆証書遺言書保管制度」を利用して法務局に保管されている場合は、家庭裁判所での検認は不要となります。

なお、遺言書がないと思って手続きを進めたあとに遺言書が見つかった場合には、遺産分割協議をやり直す必要が生じるケースもあるため、早期のうちに遺言書の有無を確認することが大切です。遺言書の有無については、公証役場・法務局への問い合わせや、自宅や貸金庫などを中心に確認しましょう。

相続人を確定する

遺言書がない場合、または遺言書に記載がない財産がある場合、民法で定められた法定相続人が遺産を相続します。「法定相続人はだれか」を正確に特定するためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せて調査する必要があります。

特に兄弟姉妹などが相続人となるケースでは、予期せぬ相続人が発覚することもあり、あとから新たな相続人が見つかると、一度合意した遺産分割協議をやり直す必要が生じるため、丁寧な相続人調査が必要不可欠です。

なお、戸籍の収集については、本籍地の移動(転籍)が繰り返されている場合、本籍地ごとに戸籍を取り寄せる必要があり、非常に手間と時間がかかる作業でした。しかし、2024年3月からは、本籍地に関わらず、最寄りの市区町村役場で戸籍謄本をまとめて取得できるようになるなど、負担軽減の取り組みも進められています。

ただし、古い戸籍や兄弟姉妹の戸籍などの一部の書類については、引き続き本籍地での取得が必要となるため、注意が必要です。

戸籍の収集や相続人調査については、複雑な作業をともなうケースも多いため、必要に応じて司法書士や行政書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

相続財産の調査と財産目録の作成

相続人を確定させる作業と並行して、被相続人の財産を調査し、財産目録を作成します。財産目録は、そのあとに行う遺産分割協議や相続税の申告をスムーズに進めるために非常に重要な書類です。

調査対象となる被相続人の財産には、「プラスの財産」と「マイナスの財産」があります。財産目録に決まった形式はありませんが、それぞれの財産を明確に区分して記載することをおすすめします。

▪プラスの財産
不動産(土地、建物、マンション、農地、山林など)や預貯金、現金、有価証券、自動車、宝石、ゴルフ会員権、未入金の債権など

▪マイナスの財産
借金、住宅ローン、自動車ローン、未払いの税金や医療費、保証債務など

不動産については、毎年送付される「固定資産税課税明細書」によって、物件ごとの所在地や評価額を確認できます。この書類が手元にない場合は、該当する市区町村の役所で「固定資産評価証明書」を取得できます。

また、同じ市区町村内で被相続人が所有するすべての不動産情報を一覧で確認できる「名寄帳(なよせちょう)」の写しも取得すると、相続財産の見落としを防ぐことにも役立ちます。

また、被相続人名義の不動産に抵当権が設定されているケースもあります。抵当権が設定された不動産を相続した場合には、抵当権が自動で消滅することはなく、抵当権も含めて承継することとなります。相続財産に不動産が含まれるときは、法務局で「全部事項証明書」を取得し、抵当権の有無についても必ず確認しましょう。

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相続方法を選択する

相続人と相続財産が確定したあと、相続人は被相続人が保有していた権利や義務をどう引き継ぐのかについて、以下の3つの方法から選択する必要があります。

▪単純承認
被相続人のプラスの財産とマイナスの財産(借金など)のすべてを無条件で相続する方法です。特に手続きを行わない場合、自動的に単純承認とみなされます。

▪限定承認
被相続人の債務がプラスの財産(預貯金や不動産など)の範囲内で責任を負う相続方法です。例えば、相続財産が2,000万円あり、借金はいくらあるのかわからない場合、2,000万円の範囲内で借金を承継し、それ以上の借金は相続しないこととなります。なお、限定承認については、相続人全員が共同で行わなければなりません。

▪相続放棄
被相続人のプラスの財産もマイナスの財産も一切相続しない方法です。借金や債務など、自分にとって不都合となる一部の財産のみを放棄することはできず、すべての遺産の相続を放棄します。なお、限定承認とは異なり、相続人全員が共同で相続放棄する必要はなく、相続人ごとに相続放棄の判断を行うことが可能です。

「限定承認」や「相続放棄」を選択する場合には、原則として、相続の開始があったことを知った日から3ヵ月以内に家庭裁判所へその旨を申述しなければなりません。この3ヵ月を熟慮期間といい、期間内にこれらを選択しなかった場合には、自動的に「単純承認」とみなされるため、期限を超過しないように注意が必要です。

なお、相続財産の調査が間に合わないと見込まれる場合は、家庭裁判所に熟慮期間の伸長手続きを申し立てることも可能です。

相続放棄や限定承認の手続きには、申述書や戸籍謄本など、複数の書類の提出が必要となります。これらの手続きは複雑なため、弁護士などの専門家に相談することも検討しましょう。

遺産分割協議と協議書の作成

遺言書が存在しない場合や、遺言書はあるものの、どの財産をだれが相続するかについて不明確な場合、または相続人全員の合意によって遺言書の内容とは異なる分割を行う場合には、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が必要となります。

遺産分割協議は相続人全員の同意がなければ成立しません。相続人が一人でも反対すれば協議はまとまらず、不動産の相続手続きや相続税申告が滞る原因となります。

なお、協議が無事に成立したら、その遺産分割の内容を「遺産分割協議書」という文書として残します。遺産分割協議書は、不動産の相続登記や相続税の申告を行う際に必要となる重要な書類です。

遺産分割協議書には、被相続人の情報や相続人全員が分割内容に合意している旨、各相続人が取得する財産の詳細、書類の作成年月日などを記載し、相続人全員が署名および実印の押印を行います。

遺産分割協議書の作成には法的な知識が必要となる場合があり、記載内容に不備や不足があると、そのあとの手続きが滞る原因にもなりかねません。作成に不安がある場合には、弁護士や税理士、司法書士などの専門家に依頼することも検討しましょう。

不動産相続における3つの分割方法

不動産の相続における分割方法には、主に「現物分割」「換価分割」「代償分割」の3種類があります。不動産や相続の状況を踏まえ、自らにとって最適な分割方法を慎重に検討することが重要です。

現物分割
現物分割とは、土地や建物などの不動産を現物のまま相続する方法です。例えば、複数の不動産がある場合には、各相続人がそれぞれひとつずつ不動産を相続したり、ひとつの広大な土地を複数の区画に分筆して各相続人が取得したりするケースが該当します。

現物分割のメリットとしては、手続きが比較的シンプルであることや、不動産を現金化する手間や費用がかからない点が挙げられます。

しかし、不動産は現金のように均等に分けづらいため、各不動産の評価額の違いや土地の形状、立地条件などによって、相続人同士で不公平感が生じやすいという問題点があります。

また、土地を分筆する場合には、その分筆によって土地の価値が下がる可能性についても考慮が必要です。

換価分割
換価分割とは、被相続人の相続財産を売却して現金化し、その現金を相続人同士で分割する方法です。相続人全員が不動産の相続を望んでいない場合や、相続税の納税資金を確保したい場合に有効な手段となります。

この方法の最大のメリットは、不動産を現金化するため、相続人同士で公平に財産を分割しやすくなるという点です。また、不動産を売却することで、維持費や固定資産税の心配が不要になるという利点もあります。

一方で、不動産を売却する手間と費用(仲介手数料や測量費など)が発生することや、売却までに時間がかかることがある点がデメリットです。また、売却にともなって利益が生じる場合には譲渡所得税が課税される点にも注意が必要でしょう。

さらに、買い手が見つからないリスクや、売却を急ぐことによって低い価格で売らざるを得ないケースも少なくありません。

代償分割
代償分割とは、特定の相続人が現物で財産を相続する代わりに、他の相続人に対して金銭などを「代償金」として支払うことで、相続分を調整する方法です。不公平にならないよう、不動産を取得する相続人が、他の相続人に対して代償金を支払うケースが一般的です。

代償分割は、特定の相続人が不動産を承継するため、その不動産に住み続けたい場合や、家業のために不動産を必要とする場合などに適しています。換価分割と同様に、金銭を介することで公平性を保ちやすく、将来的にも問題が発生しにくい分割方法とされています。

しかし、不動産を相続する相続人については、代償金を支払うだけの十分な資力が必要となります。また、代償金の金額を巡って相続人同士で意見が対立し、トラブルに発展する可能性もあります。

不動産の相続登記を行う

遺言書または遺産分割協議によって不動産を取得する相続人が決まったら、その不動産の所在地を管轄する法務局にて、その所有者を被相続人から相続人へ変更するための「相続登記」を行います。

相続登記については、2024年4月1日から義務化されており、法改正以降の相続だけでなく、2024年3月31日以前に相続した不動産も義務化の対象となります。相続登記の期限は、不動産を相続したことを知ってから3年以内とされています。正当な理由なく、期限内に相続登記を行わなかった場合には、10万円以下の過料が課される可能性があります。

相続登記を行うために準備すべきものは、以下のとおりです。

  • 登記申請書や被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産を取得する人の住民票
  • 固定資産評価証明書
  • 遺言書または遺産分割協議書
  • 相続人全員の印鑑証明書

など

これらの書類の収集や申請書の作成は手間がかかる複雑な作業となるため、特に相続不動産が多い場合や共有で相続するような場合には、司法書士などに依頼することも検討しましょう。

相続税の申告と納付を行う

不動産を含む遺産の総額が基礎控除額を超える場合には、相続税が発生し、相続税の申告および納付を行わなければなりません。なお、相続税における基礎控除額は以下の算式によって計算します。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続税の申告・納付期限は、被相続人が死亡したことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から10ヵ月以内です。期限内に申告・納付できない場合には、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課される可能性もあるため、注意が必要です。

なお、相続税の計算は非常に複雑ですが、以下のような控除や特例制度を活用することで、税負担を軽減できる場合があります。

▪小規模宅地等の特例
被相続人が住居用や事業用、貸付用として使っていた宅地について、一定の要件を満たす場合に、その評価額を最大80%減額できる制度です。

▪配偶者の税額軽減(配偶者控除)
被相続人の配偶者が相続した遺産額が1億6,000万円、または配偶者の法定相続分のいずれか大きい金額までは、相続税が非課税となる制度です。

これらの特例や控除を適用するためには、原則として、相続税の申告期限内に遺産分割協議を成立させ、その内容に基づいた申告書を提出する必要があります。

ただし、申告期限までに遺産分割協議が成立しない場合でも、「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付した申告書を期限内に提出しておくことで、協議が成立したあとに特例や控除を適用することが可能です。

さらに、申告期限から3年経過したあとも、遺産分割できないやむを得ない事情がある場合には、税務署長の承認を受けることで、さらにその期限を延長できる場合もあります。

また、上記の控除や特例制度以外にも、相続人が未成年や障害者である場合の税額控除や、短期間のうちに相続が連続して発生した場合に適用できる「相次相続控除」などもあります。

相続税申告書は枚数も多く、特例の適用可否の判断や税額計算も複雑なため、相続財産が高額な場合や評価の難しい財産がある場合は、税理士に相談することをおすすめします。

不動産相続でよくあるトラブルと対策方法

不動産相続は、多くの人にとって滅多に経験することのない大きな出来事です。しかし、その手続きは複雑で、予期せぬトラブルに発展するケースも珍しくありません。大切な家族の遺産をめぐる争いは、当事者同士の関係性を悪化させるだけでなく、時間や費用、心理的な負担も大きくなります。

ここでは、不動産相続で特によくあるトラブル事例と、それを回避するための対応策について解説します。

遺産分割協議がまとまらない

遺言書がない場合、不動産を含む遺産については、相続人全員での話し合いによって分割方法を決めることになります。しかし、遺産分割協議がスムーズに進まないケースは非常に多いです。

トラブルの原因としては、遺産に対する意見の不一致が挙げられます。例えば、特定の相続人が「家は長男が継ぐもの」と主張したり、親の介護に貢献したことを理由に「自分が多く相続すべきだ」と考えたりすることがあります。

また、長年の感情的なもつれや、相続財産に関する情報が不足していることも、話し合いを難航させる原因となります。特に、不動産は現金のように簡単に分割できないため、公平性を巡って対立が生じやすい財産の代表格といえるでしょう。

対策としてまず重要なのは、相続人全員が冷静に話し合うことです。もし、感情的になって話し合いがまとまらないようであれば、早めに弁護士や司法書士などの専門家を交えて話し合うことを検討しましょう。専門家が第三者の視点から客観的なアドバイスを提供することで、話し合いが建設的な方向へ進むケースも多いです。

それでも合意に至らない場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることも視野に入れる必要があります。調停でも解決しない場合は、裁判官が遺産分割方法を決定する審判手続きに移行します。

あとから相続人が現れた

相続人調査が不十分な場合には、相続手続きを進める中で、あとから新たな相続人が発覚するケースもあります。このような場合には、すでに進んでいた遺産分割協議のやり直しが必要になることもあり、相続手続きが大幅に遅延する原因となります。

このようなトラブルを避けるためには、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を徹底的に調査し、正確な相続人を確定させることが必要不可欠です。特に、被相続人が転籍を繰り返していたり、婚姻・離婚・養子縁組などの履歴があったりする場合には、見落としがないよう、慎重に相続人調査を進めることが重要です。

また、相続人調査をきちんと行っていた場合でも、遺産分割後に離婚が無効となった場合には、配偶者が新たに相続人として加わるケースもあります。相続開始時に離婚訴訟などが行われている場合には、その結果次第では相続人が変わる可能性もあるため、判決が出てから分割協議をスタートすることも検討しましょう。

借金や負債の見落としがあった

相続財産には、不動産や預貯金といったプラスの財産だけでなく、借金や未払いの税金、保証債務などのマイナスの財産も含まれます。これらのマイナス財産の見落としや認識不足は、相続後に思わぬ負担として相続人にのしかかる可能性があります。

このようなトラブルを回避するためには、被相続人の相続財産を徹底的に調査し、プラスとマイナスの両方の財産を「財産目録」としてまとめることが重要です。被相続人の確定申告書や預金通帳、金融機関からの郵送物などを確認し、借金や税金滞納の有無を把握しましょう。

もしマイナス財産がプラス財産を上回る可能性がある場合は、相続放棄や限定承認といった相続方法を検討することが大切です。これらの手続きについては、原則として相続開始を知った日から3ヵ月以内に行う必要があるため注意が必要です。

もし、期限までに相続財産の調査が間に合わない場合は、熟慮期間の伸長手続きを行いましょう。

名義が共有のままで分割や売却が難しい

不動産を複数の相続人同士の共有名義とすることは、一見公平な解決策に見えますが、将来的に多くのトラブルを引き起こす可能性が高いです。

共有名義の不動産を売却したり、第三者に賃貸したり、大規模な修繕を行ったりする場合には、原則として共有者全員の同意が必要となります。相続人の中に非協力的な人物がいたり、連絡が取りにくい人がいたりする場合、これらの手続きが円滑に進まなくなることがあります。

さらに、共有名義の不動産が次の世代に相続されると、共有者がさらに増え、権利関係がより複雑化するリスクも高まります。

このような状況を解決するためには、「共有物分割調停」や「共有物分割請求訴訟」など、共有状態を解消するための法的手段を検討することも有効です。また、自分の共有持分のみを売却するという選択肢もありますが、共有状態の不動産の持分は買い手が見つかりにくく、相場よりも低い価格での売却になることが多い点には注意が必要です。

将来のトラブル発生を未然に防ぐためにも、不動産を共有名義にするのは可能な限り避け、換価分割や代償分割など、共有状態を解消できる方法を検討することが望ましいでしょう。

土地の境界が不明確で売却や分割が難しい

長年にわたる管理の不備や、境界を示す標識(境界標)の損壊、あるいは隣接する土地の所有者との間で過去に境界をめぐるトラブルがあった場合など、土地の境界が不明確なままになっていることがあります。

このような土地は、正確な面積や形状を特定できないため、遺産分割協議で公平に分けることが難しくなります。また、売却を検討する際にも、買い手が境界トラブルのリスクを嫌うため、売却が困難になったり、市場価格よりも大幅に低い価格でしか売却できなかったりする可能性があります。土地の評価は立地や形状によって大きく変わるため、境界の不明確さは大きな問題となります。

これらの問題に対処するためには、まずは測量士に依頼して、境界確定測量を実施することが重要です。これにより、隣接する土地の所有者と協力して境界を明確にし、筆界確認書や境界確認書などの書類を取得しましょう。これらの書類があれば、土地の正確な境界を確定させ、その後の売却や分割手続きを円滑に進めることができます。

なお、三菱地所住まいリレーでは、売買取引のサポートとして、境界確認や仮測量図の作製サービスをご提供しております。売却時のトラブル回避にも効果的ですので、不動産の売却をご検討の方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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相続登記の遅れが発生した

土地や建物の所有者が亡くなった場合には、それらの不動産を取得する相続人を決め、相続登記によって、不動産の名義をその相続人へ変更しなければなりません。

相続登記は、遺産分割協議の成立に時間がかかることに加え、登記手続き自体が複雑であることや、必要書類の収集に手間がかかることなどから、遅れが発生しやすい手続きの一つとして挙げられます。

しかし、2024年4月1日からは不動産の相続登記は義務化されており、不動産を相続したことを知ってから3年以内に登記を申請しなければ、10万円以下の過料の適用対象となります。したがって、不動産を相続した場合は、期限内に登記手続きを済ませることが重要です。

なお、遺産分割協議がまとまらず、期限内に相続登記が間に合わない場合には、相続人ごとに「相続人申告登記」の手続きを行うことで、いったんは相続登記の義務を履行したものとみなされます。そのうえで、分割協議が成立した際には、正式に相続登記を行いましょう。

相続税申告や税額計算にミスがあった

被相続人の遺産総額によっては、相続税が発生し、相続税申告や納税が必要となる場合もあります。相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10ヵ月以内と定められており、期限内の申告・納付を怠った場合には、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性もあります。

相続税の申告や納税においては、「申告期限内に手続きを済ませなかった」「小規模宅地等の特例や配偶者控除といった特例や控除を適用し忘れた」「不動産の評価額を誤って計算した」などのトラブルが発生しがちです。

このような失敗を避けるためには、相続が発生したら、相続税の申告期限に余裕をもって税理士へ相談することが最も有効な対策です。税理士に依頼することで、相続財産の正確な評価額を算出し、適用可能な控除や特例を最大限に活用できるため、適切な相続税額を計算できるでしょう。

また、申告期限の厳守はもちろんのこと、税務調査が入った場合にも適切に対応してもらえるというメリットも期待できます。

なお、三菱地所ハウスネットでは、不動産売却・購入・賃貸についてご相談いただいたお客様に税理士の無料相談をご提供しておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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相続した不動産はすぐに売却できる?

不動産を相続したからといって、すぐに売却できるとは限りません。複数の相続人が存在する場合には、誰がその不動産を取得するのかを決めるために、遺産分割協議を経て全員の合意を得なければなりません。

また、不動産の名義が被相続人のままでは売買契約を締結できないため、相続登記によって名義変更することも必要不可欠です。これらの相続手続きを経て、ようやく売却の準備に進むことができます。

なお、相続手続きが完了したあとの売却手続きについては、一般的な不動産売却と同じ流れになります。

不動産売却の流れ

  • 不動産会社へ査定を依頼する
  • 市場価格の目安を把握する
  • 売却条件を検討する
  • 不動産会社と媒介契約を締結して買い手を探す
  • 購入希望者が現れたら、価格や引き渡し時期などの条件交渉を行う
  • 合意に至れば売買契約を締結する

契約時には手付金のやりとりが行われ、残代金の受け取りと同時に物件の引き渡しが完了します。

相続不動産の売却には「相続に関する手続き」と「売却に関する手続き」の二段階があります。基本的には前者を済ませなければ後者に進むことはできないため、相続開始後はできるだけ早めに話し合いや登記手続きを進め、その先の売却活動に備えることが重要です。

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不動産売却で知っておくべき基礎知識を紹介!流れや見るべきポイントについて

まとめ

不動産相続では、相続登記や相続税の申告といった法律上の手続きが求められるだけでなく、相続人同士の関係性にも十分な配慮が必要となるため、慎重に手続きを進めることが求められます。

不動産相続で起こりがちなトラブルを避けるためには、相続手続きを進める際のステップを把握するなど、正しい基礎知識を身につけておくことが必要不可欠です。各種手続きに不安がある場合には、積極的に専門家へ相談することによって、スムーズかつ安心できる不動産相続を実現できるでしょう。

また、相続が発生する前に相続のことをしっかりと話し合っておくなど、家族同士が日頃から良好な関係性の構築に努めることも大切です。

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