不動産用語集
不動産、住宅、法規制等、不動産取引に関連する用語を多数収録しています。
お住み替えコラム
2023.11.02
住宅ローンなどで金融機関から融資を受ける時は担保が必要となりますが、抵当権の設定を条件とすることが多くあります。また、抵当権には「根抵当権」という権利もありますが、どのような違いがあるのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、抵当権と根抵当権の違いや、抵当権が実行されるとどのようなことが起きるのかを紹介します。そのほか、初めて住宅ローンを借りる方向けに、抵当権の仕組みや設定方法、抹消方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
不動産に関わる権利については、登記を行わなければ第三者に対して自身の権利を主張することができません。これを「第三者への対抗要件」と呼びますが、不動産の所有権をはじめ、あらゆる権利は登記をする必要があります。
登記をする不動産の権利は不動産登記法で10個定められています。不動産登記簿などでよく目にする権利には、次のような種類があります。
このような権利は登記簿に記載します。登記簿は「表題部」「甲区」「乙区」の3つにわかれており、次のように記載する内容が決まっています。
抵当権は「乙区」に記載される権利であり、「担保」の一種になります。
担保とは、融資を受ける時に債権者に対して提供するもので、保証人を付ける場合は「人的担保」になります。
抵当権は「物的担保」と呼ばれ、借りるお金の額に見合う「モノ」を提供します。一般的には住宅を購入する時にはその住宅を担保としますが、ほかの不動産を担保として提供する場合もあります。
住宅ローンを借りる場合、現在では保証会社の委託保証を付けて、保証人を付けないケースが多く、委託保証と抵当権の設定により金融機関は債権の保全を図っています。
抵当権には、ほかに「根抵当権」という種類の権利があります。
根抵当権とは、融資を受ける極度額を決めておき、極度額の範囲内であれば「返す、借りる」を繰り返すことができるようにする担保の方法です。
住宅ローンのように、1回だけの金銭消費貸借契約では根抵当権を付けることはありませんが、企業や個人事業主が金融機関から事業資金として融資を受ける際に多く使われています。
抵当権は登記することにより効力を持ちますが、抵当権の設定により権利をすぐに実行することはありません。抵当権を実行するには必要な手続きがあり、金融機関がいつでも権利を行使できるわけではありません。
住宅ローンのための抵当権を実行するには、債務者が返済を滞り「債務不履行」の状態になっていることが要件となります。
例えば1ヶ月遅れで返済を続けているケースや、返済約定日には返済できなくても次の返済約定日までには返済しているケースでは、債務不履行の状態と判断するのは難しいと言えるでしょう。
滞納が続き、金融機関からの督促に対しても返済がない状態になると、金融機関は抵当権を実行するため裁判所に「差押」と「競売開始」の申立を行います。
では、金融機関が裁判所に差押を申し立てる、抵当権の実行とはどのようなタイミングで行われるのでしょうか。
滞納が続くと、金融機関は次のような債権回収の動きに移行します。
上記のように保証付き融資か否かによって、債権回収の方法に若干の違いがあります。
保証会社が付いている場合は、保証会社が代位弁済することにより求償債権を取得し、抵当権の実行は保証会社が行います。
保証会社が付いていない場合は、サービサーが金融機関の代理となって抵当権を実行するか、サービサーが債権譲渡を受け本来の金融機関に代わって債権者となり、抵当権を実行します。
上記の代位弁済や債権譲渡が行われるのは、一般的には滞納が6ヶ月以上続いた時と考えられています。つまり抵当権の実行は、「滞納が6ヶ月以上となった時」と言えますが、金融機関により判断が異なる場合もあり、おおよその目安と捉えてください。
抵当権の実行により、金融機関(保証会社やサービサー)は担保の不動産を強制的に売却できます。売却すると、代金のほとんどは債権者である金融機関が受取ります。
売却代金が住宅ローンの残高を超えている場合は住宅ローンを完済できますが、売却代金よりも住宅ローン残高が多い場合は債務が残ってしまい、引き続き返済をしなければなりません。
抵当権が実行される前の時点においても、住宅ローンの返済が難しくなった場合には、上記のように残高よりも高く売却できる見込みがあれば売却し、完済してしまうほうが生活の面で楽になることがあります。
しかし、住宅ローンの一括弁済できるほどの金額で売れない場合は売却できず、滞納が続き、やがては前述したように抵当権が実行され競売へと進んでしまいます。
そこで、住宅ローン債務者の救済方法として1990年代後半頃から始まった「任意売却」という方法があります。
任意売却は、住宅ローン残高に満たない売却代金であっても抵当権を解除し、残債務については債務者の負担を軽減した長期の返済計画を組むなどして担保不動産を売却し、住宅ローンの清算を図る方法です。
任意売却は抵当権の付いたローン返済で困った時など、悩みを解消する方法として有効な方法となっています。
抵当権が設定された不動産を売却したり、相続したりする場合、最初に確認すべきことがあります。
抵当権設定の有無は、法務局から「登記事項証明書」を取得すると確認できます。
債務が残っているかどうかについては、抵当権者に連絡し確認をします。そのためにも抵当権者が現存しており所在がわかること、連絡が取れることが大切です。
抵当権者が金融機関の場合は、抵当権設定後に金融機関が名称変更や、ほかの金融機関と合併するなどがありますが、ほとんどの場合連絡が取れるでしょう。
個人間の貸し借りでは、抵当権者が個人の場合があります。抵当権者が行方不明である場合、抵当権の解除と抹消登記が可能ですが、手間がかかってしまいます。司法書士などに抵当権解除について早めに相談するようにしましょう。
抵当権の対象となっている債務がなくなっていて、抵当権が現存している場合は、売却や相続の前に抵当権抹消登記が可能であれば抹消します。相続の場合は相続登記を終えてから抹消することも可能です。
売却や相続にあたり、債務が残っている場合は抵当権の効力があるため、しっかりとした手続きを踏んで措置をしなければなりません。
売却の場合には、残っている債務を売却代金で一括弁済し、抵当権の解除・抹消登記を行い引き渡します。この時売却代金で一括弁済できない場合は、別途資金を用意するか、前述の任意売却により債務の弁済をします。
抵当権の付いた不動産を相続する時、債務が残っている場合は相続人が債務も相続します。その上で不動産を売却し、売却代金で債務を弁済するか、金融機関からの融資のように長期返済の債務であれば金融機関と協議し、相続人が債務を承継することを承認してもらう必要があります。
この場合には、設定されている抵当権の債務者変更登記が必要です。また、相続人が複数いる場合には相続登記の方法に注意が必要なので、司法書士への相談をおすすめします。
金融機関の承認が得られない場合は前述したように、相続した不動産を売却して債務を弁済するようにしなければなりません。相続人が債務承継する場合は抵当権が付いたままになり、売却する場合には抵当権が解除されます。
相続財産と債務を比較し、債務が多い場合には相続放棄という選択肢があることを覚えておきましょう。
金融機関から融資を受ける場合には、抵当権の設定が必ず条件となるわけではなく、金融機関の判断で抵当権を付けずに融資する場合もあります。このような融資を「無担保融資」と言いますが、抵当権の設定を条件とするかしないかは債権者が決めることです。
住宅ローンはほとんどが抵当権付きになりますが、住宅リフォーム資金の融資などには抵当権を付けないローン商品があります。
抵当権を付けることを条件とする融資では、担保となる不動産の所有者が抵当権の登記義務者になります。
例えば、事業資金の融資を受ける事業主が親の不動産を担保にする場合、事業主本人は債務者であり、親は担保提供者兼抵当権登記義務者になるということです。
抵当権の設定には必要な書類があり、金融機関からの融資を受ける際にはそれらの必要書類を一式揃えて、金銭消費貸借契約の締結と抵当権設定契約の締結を行います。
抵当権設定のための申請手続きなどは、金融機関が依頼した司法書士が「登記権利者」と「登記義務者」の代理人となって行うので、債務者や担保提供者が実際に手続きを行うことは少ないです。
抵当権設定に必要な書類は以下のとおりです。
登記申請手続きは担保提供者が自身で行うこともできますが、一般には債権者が指定した司法書士に依頼し行います。費用として登録免許税が債権額の0.4%になりますが、マイホームの軽減特例が利用できる場合は0.1%に軽減されます。そのほか、司法書士報酬として数万円が必要です。
住宅ローンの返済がすべて終わるなど、抵当権設定の原因となっていた債務がなくなると抵当権は効力を失います。ただし登記された抵当権はそのままになるので、抵当権の抹消手続きが必要です。
債権者に抵当権の抹消手続きの義務はなく、抵当権を設定する時の義務者、つまり担保提供者が行わなければなりません。
抹消せず放っておいても抵当権を実行されることはありませんが、売却する際には抹消して買主に引き渡す必要があります。
一般的には住宅ローンを完済すると金融機関から抵当権抹消のための書類が送られてくるので、自身で登記申請するか司法書士に依頼することになります。
すぐ登記せずに抹消のための書類を紛失してしまうと、再度取り寄せる必要があります。また将来的に、抵当権者が合併や会社解散などにより存在しなくなると、抵当権抹消の書類を準備するまでにたいへん手間がかかってしまいます。
そのため抵当権の効力がなくなった場合は、すみやかに抹消登記をするのが望ましいでしょう。
抵当権を抹消するには以下の書類が必要です。
抵当権抹消登記の費用は、登録免許税として抵当権1個につき1,000円ですが、通常は土地と建物に設定するので2,000円になります。また土地が2筆ある場合は合計3,000円となります。
そのほか、司法書士に依頼する場合は司法書士報酬が数万円必要です。
また、債務が残っていて売買代金から一括弁済する場合は、引き渡し・決済の時に、抵当権抹消登記と所有権移転登記を同時に行うのが一般的となっています。
抵当権とは、住宅ローンなど比較的大きな金額を金融機関から借りる場合に設定される権利を指します。
抵当権が付いており、返済を継続中の不動産であっても売却は可能です。ただし、引き渡しまでに抵当権の解除が求められるため、売却の時点で借入金を全額返済できるかどうかが問題となります。
買い替えや住み替えで不動産の売却を考えているけれど、売却代金では借入金の返済がしきれず抵当権の解除が難しい場合、住み替えローンなどの方法があります。
抵当権のついた住宅でローンの残りが多くても、買い替え・住み替えをすることは必ずしも難しいわけではありません。
上記のようなケースでお悩みの方は、 三菱地所ハウスネットにぜひご相談ください。インターネットから無料売却査定もご利用いただけます。
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