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住まいリレーコラム
2025.09.01
不動産を購入するときに住宅ローンを利用した場合、通常、その物件には「抵当権」という担保の権利が設定されます。この抵当権は、ローンを完済すれば役割を終えますが、登記上は自動的に消滅することはありません。
きちんと「抵当権抹消登記」という手続きを行わないと、第三者にとっては金融機関がその不動産の権利を保有している状態に見えるため、不動産の売却や新たに融資を受ける場合には、支障をきたす可能性があります。
この記事では、抵当権抹消の概要に加え、抵当権を放置した場合のリスクや抹消登記に必要な書類、具体的な手続きの流れなどについて詳しく解説します。住宅ローンを完済した場合や不動産売買を検討している場合には、ぜひ参考にしてください。
抵当権抹消とは、登記上、不動産に設定された抵当権を抹消(解除)する手続きのことです。
抵当権とは、「不動産を担保にする権利」を指し、万が一債務者がローン返済を滞納した場合には、債権者はその不動産を差し押さえて競売にかけることで、債権の回収を行うことが可能です。一方で、抵当権の設定対象となったローンを完済した場合には、担保は不要となります。
しかし、借金を全額返済しても、登記された抵当権が自動で消滅することはないため、放っておくといつまでも抵当権が残ったままとなります。登記簿上、抵当権を抹消することで、ようやく不動産から担保が外れ、自由に売却や名義変更が行えるようになります。
したがって、ローンを完済した場合には、抵当権の抹消手続きを忘れずに行いましょう。
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ローンを払い終わったあと、抵当権抹消登記を行わずに放置しても、法的な罰則はなく、金融機関などに迷惑がかかることもありません。
しかし、抵当権を抹消せずに登記簿上に残したままでいると、以下のようなデメリットが生じる可能性があるため、注意が必要です。
抵当権が残されたままの状態では、第三者から見るとローンが完済されているかがわからないため、その不動産はまだローンの担保になっていると誤解してしまいます。
抵当権が付いた不動産は、旧所有者がローンを滞納していた場合には、競売にかけられるリスクがあるため、買い手がつきません。また買い主が住宅ローンを利用しようにも、すでに抵当権が設定された物件では、金融機関は融資しないケースが一般的です。
したがって、ローン返済後に不動産を売る可能性がある場合は、売却前に必ず抵当権を抹消しておく必要があります。
抵当権が設定された不動産の所有者が亡くなると、相続人はその不動産とともに、債務も引き継ぐことになります。抵当権の対象となるローンが残っていれば、相続人が返済を続け、完済した際に抵当権の抹消が可能です。
しかし、すでに完済済みのローンに対する抵当権が放置されていると、相続登記(不動産の名義変更)と抵当権抹消登記の両方を行わなければなりません。
相続手続き自体も煩雑ですが、さらに抵当権抹消の手続きが加わると、さらに事務負担は増加します。特に、抵当権が残っている場合、相続人は「誰に対する債務なのか」や「ローンはいくら残っているのか」を追跡しなければならず、余分な時間や手間もかかるでしょう。
このような相続手続きの負担を軽減するためにも、ローン完済後はなるべく早めに抵当権を抹消しておくことが大切です。
抵当権の抹消手続きを放置することは、住宅ローンの借り換えや、リフォームや増改築のための追加融資を受ける場合にも障害となります。
抵当権には、「登記の順番が早い債権者から優先的に弁済を受けられる」というルールがあるため、あとから抵当権を設定する金融機関ほど不利になります。そのため、金融機関は担保不動産に他の抵当権が付いていると、債権回収できないリスクが高まるため、融資の審査も通りにくくなります。
したがって、将来リフォームや借り換えを行う可能性がある場合には、すみやかに抵当権を抹消しておくことが重要です。
本来、抵当権の抹消登記については、不動産の所有者と抵当権者が共同で申請する必要があります。一般的な住宅ローンの場合、抵当権者は銀行や保証会社となり、ローン完済時には金融機関から書類が発行されるため、滞りなく抹消手続きを行えます。
しかし、もし抵当権者と連絡がつかなくなると、このような共同申請ができず、抹消手続きも複雑化します。
例えば、個人間の貸し借りで設定された抵当権が放置され、抵当権者(お金を貸した人)が消息不明になっているようなケースでは、簡単には抵当権を抹消できません。そのような場合には、裁判所に申し立てて公示催告(※1)を行い、最終的に除権決定(※2)という判決を得て抹消するなど、特別な法的手続きが必要になることもあります。これらの手続きは時間がかかるうえ、専門家への報酬も発生することとなります。
こうした予想外の大きな負担を避けるためにも、抵当権者と連絡が取れるうちに抹消登記を済ませることが望ましいでしょう。
(※1)相手の行方がわからないときに、裁判所を通じて公告し、一定期間内に名乗り出るよう求める手続きのこと。
(※2)公示催告の結果、名乗り出る人がいなかった場合に、裁判所がその権利を消滅させると決定すること。
抵当権の抹消手続きは、住宅ローンを完済したタイミングで行うのが一般的です。繰り上げ返済により、当初の予定よりも早く完済した場合も同様で、銀行から完済を証明する書類が届いたら、できるだけ早めに抹消登記を済ませることが望ましいです。
それ以外にも、不動産の売却を検討する段階で、抵当権の抹消手続きを行うケースも少なくありません。先述したとおり、抵当権が付いたままの不動産では買い手がつかないため、売却に向けて抹消登記を行う必要があります。
また、相続登記を行う前に抵当権を抹消する場合もあります。相続が開始する前にローンを完済しているのであれば、相続登記よりも前に、抵当権の抹消手続きを行います。
なお、ローン完済から長い年月が経ってしまっている場合、書類を紛失してしまっていたり、金融機関が合併・廃業によって手続きが煩雑になったりするなどの問題が起こることもあります。
このようなトラブルを防ぐためにも、完済後はできるだけ早めに抵当権を抹消しておくことが大切です。 完済にともなう抹消手続きのタイミングを逃さず、必要書類が手元に揃っているうちに手続きを行いましょう。
不動産の売却や相続をスムーズに進めるためには、まず「その不動産に抵当権が残っていないか」を確認することが重要です。住宅ローンを完済していても、登記簿上に抵当権が残っている限りは、正式に抹消しないと自由な取引ができません。
ここでは、抵当権の有無について確認する方法を紹介します。
「登記事項証明書」は、その不動産の所有者や抵当権などの権利関係を確認できる公式な書類です。法務局で誰でも取得でき、以下のいずれかの方法で交付請求が可能です。
なお、登記事項証明書を請求する際は、対象物件を特定するための「地番」や「家屋番号」などの情報が必要です。
これらの情報については、毎年届く固定資産税の納税通知書に記載されているため、交付申請を行う場合には、あらかじめ納税通知書を用意しましょう。
もし手元に見当たらない場合には、市町村役場にある「名寄帳(なよせちょう)」でも不動産の情報を確認できます。また、法務局の窓口では、係員に住所を伝えると調べてもらえる場合もあります。
交付請求から受領するまでの日数としては、郵送で受け取る場合には1週間~10日程度かかりますが、窓口で直接受け取る場合には、即日取得することも可能です。抵当権抹消のスケジュールを考慮し、余裕をもって申請手続きを行うことが重要です。
登記事項証明書を取得したら、「権利部(乙区)」という欄を確認しましょう。「抵当権設定」に関する記載がなければ、抵当権は設定されていません。
一方で、「抵当権設定」や「債権額 金〇〇〇万円」「債務者」「抵当権者」などの記載がある場合には、過去に抵当権の設定登記が行われています。ローンが完済され、すでに抵当権を抹消している場合には、同じく権利部(乙区)に「抵当権抹消」と表記されるため、抹消手続きの有無についても確認することが可能です。
自分や家族名義の不動産に抵当権が残っていないか不安に感じる場合には、まず登記簿を確認することを心がけましょう。
特に中古住宅を購入した場合や、親から不動産を相続した場合などでは、気付かずに抵当権が放置されている可能性もあります。そのようなリスクを回避するためには、先述した登記事項証明書を取得し、抵当権に関するリアルタイムの情報を確認することが最も効果的です。
登記事項証明書については、誰でも自由に確認できるうえ、法務局に出向かなくても、自宅からオンラインで取り寄せることも可能です。大切な不動産に抵当権が残されていないかをきちんと確認することは、不安解消に向けた大切な一歩となるでしょう。
正式に登記簿から抵当権を消すには、「抵当権抹消登記」の手続きを法務局で行う必要があります。抵当権の抹消手続きは自分で行うことも可能ですが、一般的には司法書士へ依頼するケースが多いです。
それぞれの方法によってメリットとデメリットがあるため、自分自身の状況に合った手続きの方法を選びましょう。
抵当権の抹消登記を自分で行うことで、司法書士への報酬が不要となります。一方で、書類に不備がある場合には差し戻しや再提出となることや、平日に法務局へ出向く必要があるなど、一連の手続きには手間や時間がかかることには注意が必要です。
自分で抵当権抹消登記を行う場合は、次のような手順で進めます。
まず、抵当権の設定対象となったローンを完済することで、銀行から抵当権抹消手続きに必要な書類(「抵当権解除証書」や「登記識別情報通知」など)が送付されます。
登記申請書を作成するためには、対象となる不動産の正確な情報が必要になります。一般的には、法務局で登記事項証明書を取得するケースが多いです。
抹消手続きの際には、①で銀行から受領した書類に加え、登記申請書の作成が必要です。なお、引越しや結婚などによって登記簿上の住所や氏名に変更がある場合には、抹消登記の前に、別途「所有権登記名義人表示変更登記」が必要となります。
登記に必要な書類が揃ったら、所轄の法務局へ登記申請を行います。申請書類の提出については、法務局窓口へ持参する方法以外にも、郵送やオンライン申請も可能です。
法務局の審査が完了すると、「登記完了証」が発行されます。これは、登記手続きが無事完了したことを証明するものです。なお、抹消登記後の「登記事項証明書」を取得することで、抵当権が抹消されたことを直接確認することも可能です。
「登記手続きを自分でできるか不安」「平日に法務局へ行く時間がない」などの場合は、司法書士に依頼するのも一つの方法です。
不動産取引にあたって仲介会社と媒介契約を締結した場合は、仲介会社の営業担当を通じて司法書士へ依頼することも可能です。仲介会社を経由することで、司法書士との書類のやりとりなどのフォローを受けられるため、よりスムーズな登記手続きを実現しやすくなります。
抵当権抹消を司法書士に依頼する場合、一般的な手続きは次の流れで進みます。
不動産登記を扱う司法書士事務所に連絡し、抵当権抹消登記を依頼する専門家を探します。正式に業務を依頼する前に、まずは無料相談などを活用し、あらかじめ費用の見積もりやスケジュールの確認、必要書類の案内などを受けましょう。
検討の結果、依頼する司法書士事務所が決まったら、司法書士と委任契約を締結し、正式に抵当権抹消登記手続きを依頼します。
業務委託契約書に署名・押印したあとは、抹消登記に必要な書類を司法書士へ渡します。具体的には、ローン完済時に金融機関から受け取った書類一式(解除証書や委任状、権利証など)を司法書士に提出します。
また、抵当権抹消登記を司法書士へ委託するために、委任状にも署名・押印を行います。この委任状については、金融機関から受け取る委任状とは別の書類です。
司法書士はこれらの書類をチェックし、不備がないかを確認します。なお、住所や氏名が登記と異なる場合には、抵当権抹消登記と合わせて手続きを依頼しましょう。
司法書士は委任状に基づき、依頼者の代理人として抹消登記申請書を作成し、法務局に提出します。
法務局とのやりとりについては司法書士が対応するため、依頼者は基本的に登記手続きが完了するのを待っているだけで問題ありません。
登記が無事に完了すると、司法書士から業務完了の報告と、登記完了証や登記事項証明書などの書類が送付されます。これらの書類については、抵当権抹消登記が完了したことを証明する書類のため、大切に保管しましょう。
登記後の書類一式を受け取ったあとは、最後に司法書士への報酬と実費(登録免許税や書類の発行手数料など)を支払い、すべての業務は完了となります。
支払いのタイミングについては司法書士事務所によって異なりますが、すべての手続きが完了したあとに一括で支払うケースが一般的です。
抵当権抹消登記の申請を行う場合には、主に以下の書類を用意する必要があります。各書類の概要や入手先を正しく理解し、漏れのないように準備しましょう。
書類名 | 概要 | 入手先 |
---|---|---|
登記申請書 |
| 法務局 |
登記済証または登記識別情報 |
| 金融機関 |
登記原因証明情報 |
| 金融機関 |
会社法人等番号 |
| 金融機関 |
代理権限証明情報(委任状) |
| 金融機関 |
司法書士への委任状 |
| 司法書士 |
なお、金融機関によってそれぞれの書類の名称や形式が異なる場合があるため、注意が必要です。また、受け取った書類を紛失してしまった場合には、金融機関へ再発行を依頼できますが、送付されるまでに日数がかかるため、スケジュールに余裕をもって準備を進めましょう。
抵当権抹消登記の手続きに必要な費用には、登録免許税や司法書士への報酬、登記事項証明書の発行手数料などが挙げられます。
各費用の概要や金額の目安については、以下のとおりです。
抵当権抹消登記における登録免許税は「不動産1件につき1,000円」と定められています。登録免許税は収入印紙で納付し、登記申請書に貼付します。
例えば、土地と建物にそれぞれ抵当権が設定されていれば、2件分として2,000円となります。また、マンションの場合には、敷地権の土地と専有部分の建物により、2件分(2,000円)となるケースが一般的です。
なお、物件数が多い場合でも1件あたり1,000円で計算しますが、20件以上を一度に申請する場合には、2万円が上限となります。
自分で手続きをする場合は不要ですが、司法書士に依頼する場合にかかる費用です。実際の額は依頼する事務所や地域、物件の状況によって異なります。
司法書士報酬の目安としては、およそ8,000円〜3万円前後(※)であり、例えば土地と建物の計2件分をまとめて依頼した場合には、15,000円程度が平均値となります。
なお、抹消登記に加え、住所変更や相続登記を同時に行う場合や、書類の紛失で特殊な手続きが必要となるなど、追加の業務が発生するケースでは、専門家への報酬も増えるでしょう。
(※)参考:日本司法書士会連合会「報酬に関するアンケート《 不動産登記関係 》」
抹消登記手続きを進めるうえでは、以下のように登記事項証明書の発行手数料がかかります。
参考:法務局「登記事項証明書等の請求にはオンラインでの手続が便利です」
なお、登記事項証明書については、抹消登記前の事前調査時に加え、登記完了後の確認のために発行するケースも多いため、発行手数料も複数回発生する場合が一般的です。
抵当権の抹消は、思わぬところで売却や相続の妨げになることがあります。スムーズに手続きするためには、以下のような注意点を押さえておきましょう。
住宅ローンを完済すると、金融機関から「抵当権解除証書」や「登記識別情報通知」などの書類一式が郵送されます。これらの書類は抵当権抹消登記に必要であるため、失くさないように保管しなければなりません。
万が一これらの書類を紛失してしまうと、再発行の手間に加え、費用が発生する場合もあります。そのため、書類を受け取ったらただちにコピーをとったうえで、原本をきちんと保管しましょう。
抵当権については、1つの不動産に複数の抵当権が設定されているケースもあります。このような場合には、すべての抵当権について漏れなく抹消手続きを行う必要があります。
例えば、住宅ローンとは別にリフォームローンでも自宅を担保に入れている場合、完済後はそれぞれの抵当権ごとに抹消登記が必要です。銀行から送付される書類もローン契約ごとに異なるため、混同しないよう注意しましょう。片方の抵当権だけ抹消し、もう一方の手続きを忘れていると、結局「抵当権付き」の状態で残ってしまいます。
なお、複数の抵当権が設定されている場合でも、登記原因(ローンの完済日を含む)や抵当権者が同一の場合には、一括で抹消手続きを行うことが可能です。
手続きの漏れを防ぐため、登記事項証明書をしっかりと確認し、すべての抵当権を抹消できているかを必ずチェックしましょう。
住宅ローンを完済したら、速やかに抵当権抹消の手続きを行うことが大切です。抵当権抹消登記を放置していても、ただちに影響がおよぶことは少ないですが、将来の不動産売却や相続、融資の場面で思わぬ障害となる可能性があります。
完済後に抵当権をきちんと抹消しておけば、第三者から見ても「担保の付いていない不動産」となり、安心して不動産取引を進めることができます。
掲載記事の内容は制作時点の情報に基づきます。
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