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2026年の区分所有法改正とは?変わることや区分所有者へのメリット・デメリットを解説

2026年(令和8年)4月1日、分譲マンションの管理や再生のあり方を根本から変える「改正区分所有法」が施行されました。1962年の制定以来、約20年ぶりの大規模改正となる今回の法整備については、全国に広がる老朽化マンション問題や、連絡の取れない所有者の増加といった深刻な社会課題に対応するためのものです。

この記事では、マンションの購入を検討している人や現在の所有者が、大切な資産を守るために知っておくべき改正の重要ポイントについて、専門的な視点から詳しく解説します。

区分所有法とは?

区分所有法(正式名称:建物の区分所有等に関する法律)は、マンションや集合住宅のように、1つの建物を複数人で区分して所有する場合のルールを定めた法律です。

対象となるのは、分譲マンションやオフィスビルのように、建物が構造上いくつかの部屋に分かれ、それぞれが独立して住居や店舗などとして利用できる建物です。

こうした建物では、各住戸のように区分所有者が単独で所有・管理する「専有部分」と、エントランスやエレベーター、建物の構造部分など、全員で共有する「共用部分」が存在します。区分所有法では、この専有部分と共用部分の関係が明確に定められています。

また、区分所有者は自動的に管理組合の構成員となり、個人の意思で脱退することはできません。管理組合では、年に1回以上の総会を開き、管理規約の見直しや修繕の実施などについて、所有者数や持分割合に応じた議決権に基づき、多数決で意思決定が行われます。

さらに、建物の維持管理のために必要な「管理費」や、将来の大規模修繕に備える「修繕積立金」についても、区分所有法や管理規約に基づき、区分所有者が負担する仕組みが定められています。

2026年の区分所有法改正の背景

今回の法改正が必要になった最大の要因としては、日本国内のマンションが直面している建物と居住者の「2つの老い」という危機的な状況が背景として挙げられます。

高経年マンションの急増と防災リスクへの懸念

国土交通省が公表している資料によると、2024年末時点において、築40年を超えるマンションは約148万戸存在しており、これは分譲マンションストック全体の約20%に達しています。

さらに、20年後の予測としては、現状の約3.3倍である483万戸にまで激増すると推計されています。しかし、これまでの建て替え実績は累計でわずか約2.6万戸(ストック全体の0.4%程度)に留まっており、老朽化対策が追いついていないのが実態です。

参考:国土交通省「分譲マンションストック数の推移」
参考:国土交通省「築40年以上のマンションストック数の推移」
参考:国土交通省「マンション建替え等の実施状況」

管理不全によって耐震補強や外壁修理が放置されれば、地震時の倒壊や外壁剥落といった周辺への危害を招く恐れがあります。このようなマンションの老朽化が進行することで、居住者だけでなく、近隣住民にもさまざまなリスクがおよぶこととなるでしょう。

所有者の高齢化と所在不明者の増加

居住者の高齢化により、管理組合の役員の担い手不足も深刻化しています。国土交通省の「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」によると、マンション居住者の世帯主のうち、60歳代や70歳代の割合が増加傾向にあり、70歳代については全体の25.9%にあたります。

さらに、マンションの築年数が古いほど居住者の高年齢化も顕著であり、1984年以前に完成したマンションでは、70歳以上の世帯主の割合が55.9%まで拡大します。

また、相続による空き家化や投資目的の非居住所有者が増えたことで、連絡が取れない「所在不明所有者」が増加しています。先述した国土交通省の統計データによると、築年数が古いマンションほど、所在不明・連絡先不通の部屋が一定数存在する割合が高まり、1984年以前に完成したマンションでは、約1割に達しています。

参考:国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状」

従来の区分所有法では、これらの所在不明者がいる場合でも分母に含めるという「区分所有者全員による多数決」が義務づけられています。それによって、実質的に所在不明者が拒否権を持つ形となり、マンションの維持・管理に必要な決議が行えないという合意形成の不全が全国で相次いでいます。

これらの問題を法的に解消し、円滑な意思決定を可能にするための抜本的な見直しを目的として、区分所有法の改正が行われることとなりました。

2026年の区分所有法改正で変わること

2026年の改正の柱となるのは、スムーズな意思決定を可能にする管理の円滑化と、建物の再生を促す再生の円滑化の2点です。具体的には、以下のような変更点が盛り込まれています。

参考:国土交通省住宅局・法務省民事局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」

決議ルールの変更

従来の区分所有法では、総会への欠席者や所在不明者も母数に含め、反対票と同様に扱う全区分所有者ベースの多数決が原則でした。しかし、区分所有法改正によって、より円滑な決議が可能な出席者ベースの決議へと大きくシフトします。

出席者ベースの多数決の導入

マンション管理における予算案や管理体制の見直しなどの日常的な事項における決定方法として用いられる普通決議は、従来は全区分所有者を基準としていました。

施行後は、総会に出席した人(委任状や議決権行使書を提出した人を含む)の多数決によって可決できるようになります。これによって、所在不明者や決議に参加しない無関心な区分所有者の実質的な反対票が除外されることとなります。

なお、後述する特別決議とは異なり、普通決議の場合には法律上の定足数(出席者数)の制限はありません。

特別決議への定足数設定

管理規約の変更や共用部分の重大な変更をおこなう場合などの特別決議に際しても出席者ベースとなりますが、正当性を確保するため区分所有者数および議決権の各過半数という定足数(出席要件)が新たに設けられます。

したがって、仮に出席者の多数決によって過半数を上回った場合でも、特別決議に必要な定足数を満たしていない場合には、その決議の有効性は認められないこととなります。

所在不明者の決議母数からの除外

裁判所の認定を受けることで、連絡の取れない所在等不明区分所有者を決議の母数(分母)から除外できる制度が新設されます。この制度については、すべての決議において適用されます。

この改正により、従来のような所在不明者の存在によって決議が否決されるという不条理が解消されるものと期待されています。

マンション再生に関する要件緩和

将来的な高経年マンションの更なる増加を見越して、改正区分所有法では、老朽化したマンションなどを再生するためのハードルが大幅に下がります。

建て替え決議の要件緩和

マンションの建て替え決議をおこなう場合には、従来通り、原則として5分の4以上の賛成が必要ですが、以下の5つの客観的事由がある場合に限り4分の3以上の賛成で決議が可能になります。

  • 耐震性不足や火災安全性不足
  • 外壁剥落などの周囲への危険性
  • 給排水管の腐食などによる衛生上の有害リスク
  • バリアフリー基準への不適合

このような要件緩和によって、マンション管理に必要な最低限の建て替えについては、より迅速に実行しやすくなるでしょう。

多様な再生手法(一括売却・一棟リノベ)への対応

これまで、建物・敷地の一括売却や建物の取壊しまたは一棟リノベーション(建物更新)については、区分所有者全員の合意が必要で事実上困難でした。しかし、先述した建て替え決議と同様の多数決(原則5分の4、客観的事由があれば4分の3)によって実施できるようになります。

借家契約終了制度の新設

従来の区分所有法では、建て替えなどの決議がなされた場合でも、反対する賃借人が退去に同意しなければ賃貸借契約が続くため、居住し続けることで建て替え工事が停滞するという問題点がありました。

このようなトラブルを解消するために、改正区分所有法では、建て替え決議がなされた場合、一定の金銭補償を前提として、6ヵ月の猶予をもって賃貸借契約を終了させられる仕組みが新たに設けられています。

管理不全への対応制度の新設

改正区分所有法では、区分所有者による適切な管理がなされておらず、専有部分や共用部分が周囲に悪影響を及ぼしたり、他者の権利を侵害したりするリスクを考慮し、いくつかの対策が強化されます。

財産管理制度の創設

部屋がゴミ屋敷化している場合や、廊下などの共用部分に危険物が放置されている場合など、適切な管理が行われず、他の住人への権利侵害の恐れがある住戸があります。このような場合には、区分所有者や管理組合に代わって管理人が財産の適切な管理・処分を行えるようになります。

当制度の具体的な流れとしては、マンションの管理者や他の区分所有者、マンションの近隣住民などによる申し立てを受け、裁判所が弁護士や司法書士、マンション管理士などを「管理人」として選任し、管理命令を行います。

なお、区分所有者が所在不明な場合で、その専有部分の管理が必要なケースでも、同じく財産管理制度が適用されます。この場合において、その区分所有者の同意がなくても管理人は裁判所の許可に基づいて管理対象となる専有部分の売却も可能であり、その売却代金は所在等不明区分所有者のために供託されます。

国内管理人制度

投機目的で日本国内の不動産を購入する海外投資家が増加していることにより、マンションなどの区分所有者についても、海外に住む所有者が増加しています。このような現状においては、建物の管理自体にも支障をきたす可能性があるため、国内管理人を選任できる制度が創設されます。

当制度では、区分所有者が日本国内に住所などを有しない場合や、海外移住などによって今後住所を有しなくなる場合に、あらかじめ国内管理人を選任することで、その専有部分や共用部分の保存行為や総会での議決権行使、管理費などの債務支払いを実行できます。

なお、国内管理人の選任については、管理規約で義務付けることも可能です。

区分所有者へのメリット・デメリット

今回の法改正は、マンションの所有者や投資家にも大きな影響を与えるため、メリットとデメリットの両面を正しく理解することが大切です。

区分所有法改正による主なメリットは以下のとおりです。

  • 持続可能な資産価値の実現
  • 所在不明者や管理不全となっている住戸の問題に法的な対処が可能になる
  • 長期的な不動産投資の計画を立てやすくなる

まず、持続可能な資産価値の実現が挙げられます。マンションの管理や再生のために必要な決議が円滑化されることで、必要な修繕や改良を滞りなく実施でき、マンションの長寿命化と資産価値の維持・向上が期待できます。

また、所在不明者や管理不全となっている住戸の問題に法的な対処が可能になることで、適切な管理体制が確保されることで、より安心した生活を実現しやすくなるでしょう。

さらに、マンション投資の観点でも、今回の改正によってさまざまな決議に対する要件が緩和されたことで、出口戦略の多様化につながります。建て替えが難しい立地でも、建物取壊しによる敷地の一括売却などの選択肢が現実的になるなど、出口戦略も見据えた長期的な不動産投資の計画を立てやすくなる点もメリットです。

その一方で、改正にともなうデメリットや注意点もいくつかあります。

  • マンション管理に対する無関心層が総会を欠席するリスクが高まる
  • 資金確保が大きな課題となる
  • 意図的な決議操作が行われるリスクも懸念される
  • 立地が悪いと買い手がつかない

まず、今回の改正によって普通決議や特別決議の一部(建て替えや売却、取壊しなどを除く)に「出席者ベース」による多数決が導入されることにより、マンション管理に対する無関心層が総会を欠席するリスクが相対的に高まります。総会を欠席し続けた場合には、自分の意向に反する重要事項(規約の変更や廃止など)が知らないうちに決まってしまう可能性も考えられます。

また、建て替えなどの重大な決議のハードルが引き下げられたことで、区分所有者にとっては経済的なプレッシャーが高まることも意味します。もし建て替えが決まった場合には、マンションの規模によっては1戸あたり数千万円もの高額な費用負担が区分所有者に生じるケースもあり、資金確保が大きな課題となるでしょう。

さらに、マンション管理に関するさまざまな決議の要件が緩和されることで、総会の重要度が高まる一方で、一部の所有者による結託が行われたり、修繕業者が住民になりすまして総会に出席したりすることで、意図的な決議操作が行われるリスクも懸念されます。そのような事態に陥らないようにするためには、住民同士の健全なコミュニティを形成し、マンションの所有者や管理者によるチェック体制の強化がより重要になります。

不動産投資に関しては、出口戦略の多様化が進むことによって、改正後はますます立地の重要性が高まるという見方もあります。土地建物の一括売却や、建物取壊し後の売却の実現性が高まる一方で、そもそも「買い手がつきやすい不動産か」によって選択肢の幅は大きく異なります。したがって、今回の改正では、好立地のマンションほど「出口戦略の多様化」による恩恵を受けやすいという側面もあるでしょう。

区分所有者が備えておくべきこと

各区分所有者および管理組合は能動的な対応が求められます。具体的には、以下のようなポイントを意識し、準備を進めましょう。

連絡先情報の更新と名簿管理

今回の改正によって、区分所有権の処分をともなう建て替え決議などを除き、普通決議や特別決議の一部(建て替えや売却、取壊しなどを除く)では、総会の出席者ベースによる決議が可能となります。これにより、外壁や防水工事などの大規模修繕工事についても、区分所有者が知らないうちに話が進んでしまう可能性もあるでしょう。特に、所在等不明区分所有者として認定されてしまうと、すべての決議における母数から除外されてしまうため注意が必要です。

意図せず自分自身が所在不明者とみなされて議決権を失わないよう、転居時や連絡先の変更時には必ず管理組合(管理会社)へ最新の情報を届け出るように徹底してください。管理組合としても、組合員名簿を適正に維持することが、円滑な運営の土台となります。

特に、投機目的などで購入し、そのマンションに居住していない場合には、住所や連絡先変更の届け出を失念し、そのまま所在不明となってしまうリスクも高まるため、変更の際には忘れずに手続きを行いましょう。

管理規約の見直しに向けた検討

多くのマンションの管理規約は現行法に基づいて作成されているため、改正法の内容を反映した規約への変更が必要です。国土交通省からひな形として公表されているマンション標準管理規約を参考に、今回の改正内容を自らのマンション運営にどのように反映すべきかを慎重に検討することが求められます。

改正内容の正しい理解や規約変更の方法などについて不安がある場合には、マンション管理士などの専門家のアドバイスを受けながら、適切な管理や将来の再生に向けた土台作りを始めましょう。

集会への積極的な参加と意思表示

改正後は出席者による多数決が基本的なルールとなることで、一票の重みは従来よりも遥かに増します。区分所有者が自らのマンション運営に無関心な場合、知らないうちに大規模修繕工事の実施が決定しており、資金負担を求められる可能性も十分考えられます。

そのような事態に陥らないようにするためには、議決権を行使し、自分自身の意思表示を明確におこなうことが大切です。総会への出席はもちろん、どうしても出席できない場合は委任状や議決権行使書を必ず提出し、意思表示をおこなうことを習慣化しましょう。

また、海外に住む区分所有者についても、国内管理人を選任することで、総会での議決権の行使が可能となります。改正によって新たに設けられた制度を活用し、自分に合った方法で意思表示を行いましょう。

区分所有法改正に関するQ&A

改正区分所有法では、所在等不明区分所有者がすべての決議から除外されるなど、抜本的な改革が多いため、それぞれのマンション管理に大きな影響がおよぶこととなります。

以下では、所在等不明区分所有者の詳細や具体的な施行日について、Q&A形式で確認します。

「所在等不明区分所有者」とは、具体的にどのような人を指しますか?

住民票や不動産登記簿などの公的記録を調査しても、連絡先が判明しない区分所有者のことです。

単に「連絡が遅い人」や「忙しくて総会に出席しない人」ではなく、法令で定められた調査を尽くしてもなお、所在が公的に確認できない人を指します。なかには区分所有者が死亡しており、その相続人の存否が確認できず、所在等不明区分所有者に該当するケースもあります。

認定には、住民票調査など公示送達と同程度の厳格な調査を行ったうえで、裁判所への申し立てが必要です。

具体的にいつから新しいルールが適用されますか?

区分所有法の主要な改正内容については、2026年(令和8年)4月1日に施行されました。今回の改正内容については、既存の区分所有建物にももちろん適用されますが、施行日よりも前に開催された総会の決議には影響しません。

なお、施行日後に総会が開催された場合でも、その招集手続きが施行日前の3月31日以前に行われている場合には、経過措置によって旧法が適用されるため、注意が必要です。

参考:国土交通省住宅局・法務省民事局「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」

まとめ

2026年(令和8年)4月1日に施行された改正区分所有法によって、日本のマンション管理は「決まらない・進まない」という時代から、多数決で物事が動く実効性の時代へと移行します。

これは、マンションの健全な管理や再生を後押しするポジティブな変化ですが、同時に所有者の無関心が、大切な資産の価値下落や経済的不利益に直結する可能性も示唆しています。今後は建物の築年数以上に、将来を見据えた管理の質や確実な再生計画が資産価値を左右する最も重要な指標となるでしょう。

今一度、ご自身の住まいや投資物件の管理状況に関心を持ち、次世代へつなげるための準備を始めてみてはいかがでしょうか。

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