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インスペクションとは?検査項目やメリット・デメリット、依頼先を選ぶポイントを解説
中古物件の売買を検討するなかでインスペクションという言葉を耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。インスペクションは、専門家が建物の状態を客観的に診断するもので、売り主と買い主の双方にメリットがある制度です。しかし、建物の不具合や劣化が気になりつつも、費用をかけてまで実施すべきか判断に迷う方もいらっしゃると思います。
この記事では、インスペクションの基礎知識や費用相場、依頼のタイミングなどを、売り主・買い主それぞれの視点で解説します。
目次
インスペクションとは?
インスペクションとは、中古の一戸建て住宅やマンションといった既存住宅を対象に、基礎や外壁などの構造耐力上主要な部分、屋根や外壁など雨漏りの可能性がある部分を調査し、劣化や不具合の有無を確認するものです。
専門知識を持つ建築士が第三者の立場で建物の状態を診断するため、売買取引の判断材料として有効とされています。
インスペクションの目的
調査を担うのは、国土交通大臣の登録を受けた団体が実施する既存住宅状況調査技術者講習を修了し、かつ建築士事務所に所属している建築士に限られます。
インスペクションの実施は義務ではない?
このルールは宅地建物取引業法に基づくもので、2018年4月1日から施行されています。国土交通省が2021年に実施した調査では、一戸建て住宅における実施率は売り主が44.6%、買い主が30.6%という結果でした。法改正前の2016年調査と比べると、いずれも大幅に上昇しています。
出典:国土交通省 不動産・建設経済局 不動産業課「改正宅地建物取引業法の施行状況及び今後の見直しの方向性について(令和5年3月)」
インスペクションの検査項目・調査内容
インスペクションでは、建物の安全性や住み心地に直結する部位を中心に調査が行われます。検査対象となるのは、構造耐力上の安全性に関わる部位、雨漏りや水漏れが発生または発生の可能性が高い部位、日常生活に支障のある劣化が生じている設備配管の3つです。
| 検査する観点 | 検査の内容 | 構造耐力上の安全性に関わる部位 |
|
|---|---|
| 雨漏りや水漏れが発生しているか、発生の可能性が高い部位 |
|
| 日常生活において支障のある劣化が生じている設備配管 |
|
調査は基本的に目視で行われ、足場を組まずに見える範囲が対象となります。建築士の判断によっては軽微な機器を使うケースもあります。
勾配屋根は少し離れたところから見ますが、屋根の上に登れる場合はかなり近づいた状態で確認します。外壁は1階部分であれば手の届く範囲であるため打診検査なども可能ですが、2階部分は手が届かないことから基本的に目視だけの検査となります。
国土交通省は、全国で調査内容を共通化するため、既存住宅インスペクション・ガイドラインを作成しており、各検査はこの指針に基づいて実施されます。
一戸建て住宅の場合
| 検査する観点 | 検査する部位と検査の内容 | 構造耐力上の安全性に関わる部位 | 小屋組、柱や梁、床、土台と床組などの構造耐力上主要な部分
床、壁、柱
|
|---|---|
| 雨漏りや水漏れが発生しているか発生の可能性が高い部位 | 外部(屋根と外壁)
屋外に面したサッシなど
|
| 日常生活において支障のある劣化が生じている設備配管 | 給水管、給湯管
排水管
換気ダクト
|
構造耐力上の安全性に関わる部位では、小屋組や柱、梁、床、土台などをチェックし、木造なら蟻害や腐朽、鉄骨造なら腐食、鉄筋コンクリート造なら基礎の劣化を確認します。著しい欠損や接合不良がないか、床や壁、柱に6/1,000以上の傾斜がないかも調査対象です。
雨漏りに関しては、屋根葺き材や外壁材、シーリング材、屋外に面したサッシまわりに欠損や破断がないかを見ていきます。
給排水・換気設備では、給水管・給湯管の赤水や水漏れ、排水管のつまりや水漏れも確認の対象です。換気ダクトの脱落や接続不良による換気不良も確認します。なお、木造アパートの調査内容も一戸建て住宅と同じです。
マンション(共同住宅)の場合
| 検査する観点 | 検査する部位と専有部分・専用使用部分における検査の内容 | 構造耐力上の安全性に関わる部位 | 壁、柱、梁
|
|---|---|
| 雨漏りや水漏れが発生しているか発生の可能性が高い部位 | 内部(天井、内壁)【専有部分】
外壁【専用使用部分】
屋外に面したサッシなど【専用使用部分】
|
| 日常生活において支障のある劣化が生じている設備配管 | 給水管、給湯管
排水管
換気ダクト
|
構造耐力上の安全性に関わる部位では、壁や柱、梁に対して鉄筋や鉄骨の腐食、6/1,000以上の傾斜、コンクリートに幅0.5mm以上のひび割れや深さ20mm以上の欠損がないかを確かめます。
雨漏りや水漏れの調査では、専有部分の天井や内壁で雨漏りや漏水の痕跡を確認し、専用使用部分にあたる外壁のシーリング材や防水層に破断や欠損がないかをチェックします。屋外に面したサッシまわりの建具もチェック対象です。
設備配管については、給水管や排水管の状態を一戸建て住宅と同じ方法で調査します。共用部分は管理組合の管轄になるため、原則として個別のインスペクションの対象外です。
インスペクションのメリット
ここからは、インスペクションのメリットを売り主のメリット、買い主のメリット、売り主・買い主に共通するメリットの3つにわけて解説します。
インスペクションを依頼する前にどのようなメリットがあるのかを理解しておきましょう。
売り主側のメリット
物件を高値で売却できる可能性が高くなる
引き渡し後のトラブルを未然に防げる
既存住宅(中古住宅)は、一戸建て・マンションともに新築のような保証がないため、不具合や欠陥への不安を抱く買い主が多くいます。しかし、建築士による専門的な調査・点検を行うことで、買い主が抱く不安感を軽減できる可能性が高まります。
買い主側のメリット
安心して物件の購入ができる
買い主は、物件に欠陥がないか、入居後に不具合が生じないかなどの不安を抱えながら購入を検討するものです。しかし、インスペクションによって自分自身の判断だけでなく専門家による調査結果が得られれば、安心して物件の購入へと進めるでしょう。
購入後の資金計画が明確になる
売り主・買い主共通のメリット
新築物件には10年保証が義務付けられている一方、既存住宅には公的な保証がありません。しかし、新築の10年保証と同様の保証内容を1~5年間行う既存住宅売買瑕疵保険という民間制度があり、インスペクションを実施して加入条件を満たした物件ならばこの保険を利用できます。
既存住宅売買瑕疵保険に加入すれば、売り主は契約不適合責任の負担を軽減でき、買い主は万が一の不具合や欠陥に起因する事故への保証が受けられます。両者が安心して取引を進められる仕組みといえるでしょう。
インスペクションのデメリット・注意点
インスペクションには、売り主・買い主それぞれに知っておくべきデメリットや注意点も存在します。事前に把握しておかないと、想定外の出費やスケジュール調整に追われる可能性があるため、依頼前にしっかり確認しておきましょう。
売り主側のデメリット
不具合が見つかった場合、修繕費や値引き交渉が発生する
具体的な対応としては、売り主負担で修繕してから売却するか、修繕費用に相当する金額を販売価格から値引きするかのいずれかを選ぶことになります。
以下の記事では、契約不適合責任の基礎知識やトラブルを起こさないための対策について解説しています。
瑕疵担保責任とは?契約不適合責任への変更内容や注意点、トラブルを避けるための対策をご紹介
判明した不具合は告知義務が生じる
例えば、インスペクションで雨漏りの痕跡が見つかった場合、その事実を伝えずに契約すると、契約不適合責任を問われる可能性があります。
事前の費用と手間がかかる
買い主側のデメリット
スケジュールがタイトになりやすい
手配している間に、ほかの買い主に先を越されるリスクがある
特に駅近や好立地の物件は競争率が高く、慎重に進めるほど買い逃しのリスクが高まる傾向にあります。
費用が自己負担になる
見えない部分は検査できない
インスペクションの費用相場と所要時間
インスペクションの費用は建築士事務所がそれぞれに決めており、一律ではありません。また、検査の内容と物件によっても金額は異なります。
一戸建て住宅では、目視によるものと簡単な器具による検査の場合、およそ5万円~7万円が相場となっています。簡単な器具としては次のようなものがあります。
- 墨出し用レーザーマーカー(傾きを調べる器具)
- 打診棒(モルタルやタイルなどの浮きを調べる器具)
- クラックスケール(ひび割れの幅を計測する器具)
また、建築士事務所によっては床下の検査や小屋裏検査などをあわせて実施する場合もあり、費用が数万円加算されることもあります。
検査当日の立ち会い時間は、一戸建て住宅で2~3時間程度が目安です。マンションの場合は専有部分のみの検査となるため、もう少し短く済むケースもあります。
検査が終わってから結果がわかるまでの日数は、数日~1週間程度が一般的です。建築士が現地調査の内容をまとめて報告書を作成し、依頼者へ送付する流れです。
買い主が売買契約の前にインスペクションを依頼するのであれば、報告書が手元に届くまでの期間も見越して動きましょう。書面の内容によっては売り主との値引き交渉や追加調査が必要になるケースもあります。検査日から売買契約日まで10日以上は空けておくと慌てずに対応できるでしょう。
インスペクションを実施するタイミング・流れ
インスペクションは、売り主と買い主どちらが依頼するかによってタイミングや進め方が異なります。それぞれのタイミングと流れを見てみましょう。
売り主が依頼する場合
最適なタイミング
また、専門家のお墨付きがある物件としてアピールできるため、価格設定や条件面で有利に売却活動を進められる場合があります。
大まかな流れ
- 不動産会社へ査定を依頼し媒介契約を締結する
- 検査業者(建築士事務所)を選んで申し込む
- 検査日時を調整し検査を実施してもらう
- 数日~1週間程度で検査結果の報告書を受け取る
- 必要に応じて修繕を行う
- インスペクション結果を反映して売却活動を始める
なかには不動産会社経由で検査業者を紹介してもらえるケースもあり、媒介契約時に相談しておくとスムーズに手配が進みます。
検査結果の内容によっては、修繕してから売り出すか、現状のままで売出価格に反映させるかを判断する必要があります。自分だけで判断できない場合は不動産会社に相談してみましょう。
買い主が依頼する場合
最適なタイミング
売買契約を結んだあとにインスペクションを行い、万が一重大な欠陥が見つかった場合、契約を解除するためには違約金が発生する可能性があります。その点、売買契約前であれば検査結果に納得したうえで契約に進めるため、解約のリスクを最小限に抑えられます。購入申し込みの段階で売り主側にインスペクション実施の意向を伝えておけば、そのあとの手続きがスムーズに進むでしょう。
大まかな流れ
- 気になる物件で購入申し込みを行う
- 売り主や不動産会社にインスペクション実施の許可を取る
- 検査業者を選定して依頼する
- 売り主と日程を調整し検査を実施してもらう
- 数日~1週間程度で報告書を受け取り内容を確認する
- 必要に応じて売り主と価格交渉や条件調整を行う
- 条件に納得したうえで売買契約を締結する
購入申し込みから売買契約までは一般的に1~2週間ほどしか時間がないため、業者の選定や日程調整はなるべく早く動く必要があります。また、インスペクションの結果次第では既存住宅売買瑕疵保険への加入も検討できます。引き渡し後の不具合に備えられる保険のため、検査結果と合わせて不動産会社に相談してみましょう。
インスペクションの依頼先を選ぶポイント
インスペクションを実施するためには既存住宅状況調査技術者に依頼する必要がありますが、不動産会社からのあっせんにより依頼する方法と、自ら探して依頼する方法の2つがあります。
インスペクションを実施している既存住宅状況調査技術者は、既存住宅状況調査技術者 検索サイト、あるいは、既存住宅状況調査技術者講習登録団体のホームページから検索ができるようになっています。
調査技術者や建築士事務所名がわからない場合は、都道府県や市町村を指定するだけで該当する調査技術者が一覧で表示されます。不動産会社からあっせんを受けた調査技術者がいる場合は、技術者名で検索すると該当者が表示されます。
調査技術者の詳細ページには所属する事業所が記載されているほか、多くの場合WebサイトのURLも掲載されています。事業所の事業内容や、次のような点を確認しましょう。
- インスペクションの実績があるか
- 親切な対応ができそうか
- 信頼できる建築士か
不動産会社からあっせんを受けた場合であっても、念のため上記のポイントを検索ページで確認することが大切です。
インスペクションに関するQ&A
最後に、インスペクションを検討するうえでよくある疑問についてQ&A形式でまとめました。
インスペクションで不具合が見つかった場合、買い主はペナルティなしでキャンセルできますか?
建築士なら誰に依頼しても同じですか?
また、戸建てとマンションでは建物の構造が異なるため、業者によって得意分野が分かれるケースもあります。物件種別に合わせて実績のある業者を選びましょう。
自分で見学してチェックするだけではダメですか?
まとめ
インスペクションとは専門知識を備えた建築士が建物の状態を客観的に診断するもので、売り主にとっては有利な売却に、買い主にとっては安心できる購入につながります。一方、費用負担やスケジュール調整など、事前に知っておくべき注意点もあります。インスペクションを依頼する際は慎重に検討するようにしましょう。
中古物件の売買で後悔しないためにも、信頼できる検査業者を選び、計画的にインスペクションを進めてください。
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