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2025.09.22

借地権とは?仕組みや種類、借地権付き物件のメリット・デメリットをやさしく解説

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住み替えのノウハウ
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マイホームを探しているものの、コスト面で折り合わず諦める方は少なくありません。そんな方にとって選択肢の1つとなるのが、借地権付き物件です。「借地権付き物件は買ってはいけない」という声もありますが、コストを抑えながら理想の立地でマイホームを実現できる可能性があります。

この記事では、借地権の概要や種類、メリット・デメリット、購入時の注意点まで詳しく解説します。借地権について詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

  1. 借地権とは?
  2. 借地権の種類
  3. 借地権の発生要件とは?
  4. 借地権の対抗要件とは?
  5. 借地借家法の適用範囲とは?
  6. 借地権付き物件のメリットとデメリットを理解しておこう
  7. 意外と知らない?借地権でよくある3つの誤解
  8. 借地権付き物件を購入するときの注意点
  9. まとめ

借地権とは?

借地権とは、他人の土地を借りて建物を建てるための権利です。

建物の所有を目的とする土地と建物の賃貸借に関する法律である借地借家法第一条で、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」と定義(※)されています。つまり、地主から土地を借りて地代を支払い、その土地に自分の建物を所有する権利を指します。

借地権は主に、マイホームや事務所などの建物を建てる目的で利用されます。一方、駐車場や資材置き場として土地を借りるだけの場合は、借地権には該当しません。

借家権|不動産用語集

(※)e-Gov法令検索「借地借家法(平成三年法律第九十号)

借地権の種類

借地権の種類は旧借地法と新借地借家法に分かれており、それぞれ異なる特徴があります。各借地権の特徴を見てみましょう。

旧借地法

旧借地法とは、1992年に現在の借地借家法が施行される前に使われていた、土地の賃貸借に関する法律です。現在は新しい契約には適用されませんが、1992年より前に締結された契約には、経過措置として引き続き旧法が適用されています。

旧借地法の特徴は、建物の構造によって契約期間が決まる点です。

  • 木造などの壊れやすい「非堅固建物」:20年以上
  • 鉄筋コンクリート造などの丈夫な「堅固建物」:30年以上
  • 契約期間の定めがない場合:非堅固建物30年、堅固建物60年

更新時の期間も建物構造で決まります。

  • 非堅固建物:20年(期間の定めがない場合も20年)
  • 堅固建物:30年以上(期間の定めがない場合は30年)

借地権の譲渡や売却は可能ですが、地主の承諾と譲渡承諾料の支払い(※)が発生するのが一般的です。旧借地法は土地を借りる側を保護する権利が強く、地主から更新を拒絶する際には正当事由が求められるため、土地を借りる方にとって有利な制度といえます。

このように旧借地法は、土地を借りる人の権利を強く保護する内容となっており、現在も長期間にわたって借地契約が継続しているケースでは重要な法律として扱われています。

(※)譲渡承諾料は法律で定められているものではありませんが、実務上は地主との合意で支払うことが一般的とされる。

新借地借家法

1992年に施行された新借地借家法では、普通借地権と定期借地権の2つの借地権が設けられました。それぞれの詳しい特徴をご紹介します。

普通借地権

普通借地権は契約更新ができる借地権で、長期的に住み続けられるのが最大のメリットです。旧借地法の性質を引き継ぎながらも、建物の構造による区別が廃止され、契約期間が統一されました。

契約当初に30年以上の存続期間を定めた場合には、その期間が契約期間となり、特約がなければ契約期間は30年となります。その後、1回目は20年、2回目以降は10年で契約の更新ができます。

契約を更新し続けることで半永久的に土地を借りられるため、マイホームとして安心して住み続けられるのが特徴です。

参考:e-Gov法令検索「第二章 借地」

定期借地権

定期借地権は契約更新がなく、契約満了時に土地を更地にして返還しなければならない借地権のことです。土地を購入する必要がないため、家の購入価格を抑えられます。

定期借地権には、一般定期借地権、建物譲渡特約付借地権、事業用定期借地権の3種類があります。それぞれの特徴は次のとおりです。

種類契約期間用途契約満了時の対応
一般定期借地権50年以上制限なし建物を撤去して更地で返還する
建物譲渡特約付借地権30年以上制限なし地主が建物を買い取る
事業用定期借地権10年~50年事業用のみ建物を撤去して更地で返還する

参考:e-Gov法令検索「第四節 定期借地権等」

一般定期借地権は分譲マンションなどで多く採用されており、契約期間が50年以上で用途の制限はありません。建物譲渡特約付借地権は、契約時に決めた価格で地主が建物を買い取るため、建物が残る唯一の定期借地権です。事業用定期借地権は事務所や店舗などの事業用途に限定され、居住用としては利用できません。

借地権の発生要件とは?

借地権の発生には、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  • 建物の所有目的があること
  • 賃借権または地上権であること
  • 有償契約であること

借地権は、住宅や店舗などの建物を所有することを目的として土地を借りる契約を結ぶことで成立します。駐車場や資材置き場として利用する場合は、建物の所有目的がないため借地権は発生しません。

また、借地権は賃借権または地上権であることが必要で、無償で貸し出す使用貸借は除外されます。地上権とは、他人の土地の上に建物を建てて利用する権利で、賃借権よりも借りる側の権利が強い借地権です。

なお、地主側が借地権の発生を避けたい場合は、契約に「建物の建築を禁止する」旨を明記し、土地利用の目的を駐車場や資材置き場などに限定する必要があります。そうすることで、単なる土地賃貸借となり、借地権は発生しません。

借地権の対抗要件とは?

借地権の対抗要件とは、地主が土地を第三者に売却した場合に、借地人が「この土地を借りている権利があります」と主張できるための条件を指します。対抗要件を満たしていれば、新しい地主に対しても土地の使用を継続でき、明け渡しを拒むことができます。

借地権の対抗要件は、以下のいずれかを満たす必要があります。

  • 借地権(地上権または賃借権)を登記する
  • 借地上の建物を借主名義で登記する

借りている土地に借地権の登記をすれば対抗要件に当てはまります。あるいは、借りている土地上にある建物を契約者本人の名義で登記すれば対抗できます。

注意点として、建物の登記名義人が契約者本人と異なる場合は対抗力が認められません。例えば、同居している家族名義で登記されている建物では、借地人本人の権利として認められず、新しい地主に対して借地権を主張できない可能性があります。

また、借主は新しい地主よりも先に建物の登記をしなければならないことも理解しておきましょう。

借地借家法の適用範囲とは?

借地借家法は、すべての土地・建物の貸借契約に適用されるわけではなく、契約の種類や条件によって適用されるかどうかが異なります。適用される範囲は以下のとおりです。

  • 建物の所有を目的とした土地の賃貸借
  • 建物の賃貸借
  • 有償での賃貸借

借地借家法を適用させるためには、建物の所有を目的とする土地の賃貸借でなければなりません。また、住居や事務所などで利用できる建物(土地に定着し、壁と屋根を有する建造物)である必要もあります。さらに、地主に家賃や地代を支払う有償での賃貸借でなければいけません。

適用外となるケースもある

借地借家法の適用外となる主なケースは以下のとおりです。

  • 建物を所有する目的ではない土地の賃貸借(駐車場、資材置き場、太陽光パネル用地など)
  • 使用貸借契約(無償での土地・建物の賃貸借)
  • 一時使用目的の賃貸借(短期間の利用が明らかな場合)
  • 建物に該当しない物件の賃貸借(立体駐車場、区画されていないレンタルスペースなど)

借地借家法における借地権は、建物を所有することを目的とした土地の賃貸借にのみ適用されます。そのため、駐車場や資材置き場のように建物を建てないケースでは適用されません。また、無償で貸す契約(使用貸借)や、一時使用を目的とした短期契約も対象外です。

さらに、建物として法的に認められない工作物(※)や仮設スペースなどの賃貸借契約についても、借地借家法の保護対象とはなりません。

(※)プレハブ小屋や仮設トイレ、屋根だけのカーポートのように、建物ではない簡易な設備のこと。

借地権付き物件のメリットとデメリットを理解しておこう

「借地権付き物件は買ってはいけないって本当?」と不安に思っている方も多いのではないでしょうか。たしかに、所有権とは違うルールなどがあるため、慎重な判断が必要です。

そこで、ここでは借地権付き物件のメリットとデメリットをわかりやすく整理しました。納得して判断するためにも、購入前に知っておきたいポイントを確認しておきましょう。

借地権付き物件を購入する4つのメリット

借地権付き物件は、「土地付きの家は高くて手が出ない」という方でもマイホームを持てる魅力的な選択肢の1つです。

土地から購入するのではなく、土地を借りて建物だけを所有するため、コストを抑えてマイホームを持つことができます。また、将来的な資産として検討している方におすすめです。

では、借地権付き物件の具体的なメリットを4つ見ていきましょう。

物件価格が安くなる

借地権付き物件は土地を購入する必要がありません。特に都心や人気エリアでは土地代が高くなる傾向にありますが、同じような広さや立地でも、土地から購入するより費用を安く抑えられます。

維持費をおさえられる

借地権付き物件を購入すれば、維持費を抑えられます。土地の所有者が地主のままであるため、土地部分にかかる固定資産税や都市計画税の負担がなく、支払うのは建物分のみとなります。

長く住み続けられる場合もある

借地権には契約期間が定められていますが、多くの場合、更新や延長が可能です。普通借地権の場合、最低契約期間は30年と長期間にわたり利用でき、更新によりさらに期間を延ばせます。

地主からの更新拒否には正当事由が必要で、理由なく立ち退きを命じる場合は地主が立ち退き料を支払う必要があるため、住み続けるうえでのリスクは低いといえるでしょう。

希望のエリアでマイホームを見つけやすい

借地権付き物件であれば、同じ予算で立地の選択肢が広がる可能性があるため、希望のエリアでマイホームが見つけやすいでしょう。例えば、都心や駅前などの地価が高い人気エリアでも、借地権付き物件なら相場以下で購入できる可能性があります。

借地権付き物件を購入する4つのデメリット

借地権付き物件は多くのメリットがありますが、一方で、所有権とは異なる点や注意すべき点もあります。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためにも、あらかじめ特徴やリスクも理解しておくことが大切です。

ここでは、購入前に知っておきたい主な注意点についてご紹介します。

地代の支払いが続く

借地権付き物件を購入しても土地を所有するわけではないため、毎月の地代の支払いが必要です。賃貸と同様、ランニングコストとしてかかり続けます。

住宅ローンを組んで借地権付き物件を購入した場合は、ローン返済と地代の両方を支払う必要があるため、月々の支払い額が所有権物件よりも高くなる可能性もあります。事前にゆとりのある資金計画を立てておくことが大切です。

更新料や名義書換料が発生する場合もある

借地契約は一定期間ごとに更新が必要となるのが一般的であり、更新料が発生する場合があります。更新料の支払いを拒否すれば契約解除や延滞料金の請求といったリスクが生じるため、契約内容を事前に確認しておきましょう。

さらに、相続や売却時には名義変更の手数料として名義書換料が発生します。名義書換料には法的な根拠はありませんが、地主の承諾を得るために事実上支払わざるを得ない場合がほとんどです。

建て替えやリフォームに地主の承諾が必要な場合も

借地権付き物件を建て替えたりリフォームしたりする際、地主の承諾が必要になるケースもあります。あらかじめ承諾の要否を確認しておかなければ、建て替えやリフォームを思いどおりに進められないかもしれません。

ただし、床面積や間取りを変更せず、内装や設備を最新にするだけの場合は、地主の許可が不要な場合もあります。将来的な建て替えやリフォームを考えている場合は、あらかじめ借地契約の内容を確認しておきましょう。

売却や相続時に手間が増えることがある

借地権付き物件は売却や相続の際に地主の承諾や手続きが必要になることがあり、その場合は売却時や相続時に手間が増えてしまいます。それにより、所有権物件と比べて処分がスムーズに進まない可能性があります。

地主との関係が悪化している場合や地主が売却に反対している場合、売却そのものができないかもしれません。借地権付き物件をスムーズに処分するためにも、地主との良好な関係を維持しましょう。

意外と知らない?借地権でよくある3つの誤解

借地権について間違った認識を持っていると、購入時に判断を誤る場合があります。正しい知識を身につけて適切に判断しましょう。

Q.借地権は相続できないって本当?

A.誤解です。

「借地権は相続できない」「借りているものだから子どもには引き継げない」と思われがちですが、実際は借地権も財産権の1つのため、通常の不動産と同じように相続できます。借地権の相続にあたり地主の承諾は不要で、承諾料を支払う必要もありません。

ただし、法的な承諾義務がないとしても、地主との良好な関係を維持するためには、相続が発生した旨を地主に通知しておくべきでしょう。

以下の記事では、親が借りている土地を子が購入したケースについて解説しています。気になる方はあわせてチェックしてください。
親が借地している底地を子が買った場合、地代を支払わないとどうなる?

Q.借地権付き物件は住宅ローンが組めない?

A.誤解です。

借地権付き物件は住宅ローンが組めないと思われがちですが、金融機関によっては住宅ローンの利用が可能です。条件を制限したうえで融資を認めてくれる場合があります。

ただし、物件や契約内容によって融資の可否は左右されるため、地代や契約期間、更新の有無などを事前に確認しておきましょう。また、審査に通るかは個別の事情によっても異なります。

Q.地代はずっと変わらない?

A.誤解です。

契約した地代はずっと変わらないと思っている方も多いかと思いますが、契約時に定めた地代がずっと続くわけではありません。原則的には地主と借地人の合意で変更できるとされています。

地代は、物価上昇や固定資産税の変動などを理由に、将来的に増額される可能性があります。特に長期間にわたって同じ地代を支払っている場合、周辺相場との乖離が生じて増額されるリスクが高まります。

地代の増額請求があった場合、借主は拒否することもできますが、最終的には調停や裁判で適正な地代が決定されるのが一般的です。契約時に「地代を増減しない」という特約を設けるなど、地主と話し合って対策を講じておくことをおすすめします。

借地権付き物件を購入するときの注意点

借地権付き物件を購入する際は、「土地は借りもの」であることを理解し、契約内容をよく確認することが大切です。最後に、借地権付き物件の購入時に見落としがちなポイントを以下にまとめました。

契約期間と更新の条件を確認する

借地契約にはあらかじめ契約期間が設定されています。契約期間が満了した際に想定外のトラブルを避けるためにも、将来のライフプランに合わせて契約期間と更新の条件を確認しておきましょう。地主の承諾が必要な事項はないかなども含めて詳細を把握しておくと安心です。

地代や更新料の費用負担を事前に把握する

借地権付き物件では、毎月の地代に加えて定期的な更新料の支払いが必要になります。地代の金額や支払い方法、更新料の目安が契約書に明記されているかを事前に確認しておきましょう。将来値上げの可能性がある場合は、その条件もチェックしておくと安心です。

また、地代の増額請求があった場合に話し合いによる円満な解決ができるよう、日頃から地主との信頼関係を築いておくことも大切です。

登記の有無を確認する

借地権付き物件を購入する際は、登記の有無を必ず確認しましょう。借地権は、建物を登記しておくことで、万が一地主が土地を第三者に売却した場合でも、「この土地を借りている」という権利を新しい地主に主張できる(=対抗できる)ようになります。

逆に登記がされていないと、土地の新しい所有者から「退去してください」と言われても、借地権を主張できなくなる場合があります。そのため、登記の有無は将来的なトラブルを避けるための重要なチェックポイントです。

登記されていない場合は、「そもそも登記できる状態か」「登記にかかる費用はいくらか」を事前に確認しておくと安心です。登記状況は法務局で確認でき、必要に応じて司法書士など専門家に相談するとよいでしょう。

まとめ

借地権とは、他人の土地を借りて建物を所有するための権利で、法律上は旧借地法と現行の借地借家法に分かれています。

借地権付き物件は、土地の購入費用が不要なため、比較的手頃な価格でマイホームを持てる選択肢として注目されています。一方で、地代の支払いや売却・相続時の手続きの煩雑さなど、独自の注意点もあります。

こうしたメリットとデメリットを理解したうえで、将来のライフプランに合った選択をすることが大切です。

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