耐力壁|不動産用語集

耐力壁(たいりょくへき・たいりょくかべ)

建築基準法第20条の規定に基づいて、地震力や風圧力による水平方向の力に対抗することができるように、筋かいを入れ、または構造用合板などを張った壁のことを「耐力壁」と呼ぶ。

建築基準法では「建築物は、自重、積載荷重、積雪、地震力、風圧力などに対して安全な構造でなければならない」として、すべての建築物が構造に関する基準を満たすことを要求している(建築基準法第20条第1項、同施行令第3章第1節から第7節の2)。
また、木造3階建てなどの建築物では、特に構造計算により安全性を確認することを義務付けている(建築基準法第20条第1項第2号)。

この建築基準法第20条により、建築物は地震力・風圧力という水平方向の外力に十分に対抗できるような構造を有することが要求されており、この必要性を満たすために筋かいを入れ、または構造用合板等を張った壁を一般に「耐力壁」と呼んでいる。

耐力壁の構造は、建築基準法施行令第46条第4項の表(一)と昭和56年建設省告示第1,100号により詳しく規定されている。
それによれば、例えば在来工法の木造建築物において、柱・・筋かいから構成される壁は耐力壁となる。また枠組壁工法において一定の面材(構造用合板、パーティクルボード、石膏ボードなど)を張った壁は、筋かいがなくとも、耐力壁である。

なお建築物の形状や面積により、どれだけの耐力壁を備えるべきかという基準のことを「必要壁量」といい、この必要壁量の計算方法は建築基準法施行令第46条第4項に規定されている。

この必要壁量の計算方法では、建築物の下方階ほど強度の高い耐力壁を多く備えることが要求されている。これは地震力・風圧力とも下の階にいくほど多くの力がかかり、強い対抗力が必要になるからである。

また建築物の形状については、奥行きの長い建築物ほど多くの力がかかるため、必要壁量も多くなる。このため奥行きの長い建築物では、外壁だけでなく、内部を仕切る内壁(間仕切り壁)も耐力壁にする必要性が生じやすい。

用語解説

建築基準法

国民の生命・健康・財産の保護のため、建築物の敷地・設備・構造・用途についてその最低の基準を定めた法律。市街地建築物法(1919(大正8)年制定)に代わって1950(昭和25)年に制定され、建築に関する一般法であるとともに、都市計画法と連係して都市計画の基本を定める役割を担う。

遵守すべき基準として、個々の建築物の構造基準(単体規定、具体的な技術基準は政省令等で詳細に定められている)と、都市計画とリンクしながら、都市計画区域内の建物用途、建ぺい率、容積率、建物の高さなどを規制する基準(集団規定)とが定められている。また、これらの基準を適用しその遵守を確保するため、建築主事等が建築計画の法令適合性を確認する仕組み(建築確認)や違反建築物等を取り締まるための制度などが規定されている。

その法律的な性格の特徴は、警察的な機能を担うことであり、建築基準法による規制を「建築警察」ということがある。

筋かい

軸組の垂直面において、垂直材(柱)と水平材(胴差し・土台など)を対角線に沿って斜めにつなぐ材のこと。

筋かいを入れることによって、軸組が水平方向の力に対抗できるようになり、構造強度が増す。

建築基準法施行令第45条では、筋かいの基準を設けるとともに、筋かいと柱・土台等を「金物」で緊結することを義務付けている。

なお、2000(平成12)年6月1日に施行された建設省(現国土交通省)告示第1460号により、筋かい端部における仕口(筋かいと柱・土台等との接合部のこと)の接合方法が具体的に厳しく規定された。

この結果現在では、筋かい端部の接合部においては、事実上、Zマーク金物(またはそれと同等以上の性能を有する金物)の使用が義務付けられている。

構造用合板

壁などの強度をつくり出すことができる合板のこと。

在来工法や枠組壁工法の木造建築物において、耐力壁、床板、屋根の野地板などとして使用される。

建築物

建築基準法では「建築物」という言葉を次のように定義している(建築基準法第2条第1号)。

これによれば建築物とは、およそ次のようなものである。
1.屋根と柱または壁を有するもの
2.上記に付属する門や塀
3.以上のものに設けられる建築設備

上記1.は、「屋根+柱」「屋根+壁」「屋根+壁+柱」のどれでも建築物になるという意味である。
なお、地下街に設ける店舗、高架下に設ける店舗も「建築物」に含まれる。

構造計算

構造物に関して、自重、地震、強風などの加重によって発生する応力や変形を計算することをいう。その結果に基づいて構造物の安全性等を判断する。

建築確認申請に当たっては、構造や規模に応じて定められている一定の建物について、構造計算書を添付して、構造計算適合性の判定を受けなければならない。この場合の計算方法や、想定する加重、必要とする耐力などは、建物の構造、規模、用途等によって異なる。

なお、構造計算の適合性の確保を含めて建築物の構造をデザインする業務を構造設計と言い、建築士が責任を負うべき重要な業務のひとつとされている。耐震設計もこれに含まれる。

在来工法

木造建築物の工法の一つ。
「在来工法」とは、「伝統工法」を母胎としながら、第二次大戦後の技術革新で新たに生まれた木造建築物の工法である。

この「在来工法」は、「木造軸組工法」「在来軸組工法」「在来木造」「木造軸組」などのさまざまな呼び方がされるが、その内容は基本的に同じである。

「在来工法」の特徴としては次のことが挙げられる。

1.鉄筋コンクリート製の「布基礎」(連続フーチング基礎)を採用し、土台と布基礎をアンカーボルトで緊結する
2.筋かいを入れて、プレート等で止めつけることにより、軸組全体を安定させる
3.壁材に構造用合板を採用する等により、壁に強度を与える
4.その他、材の接合部(仕口)に多様な金物を用いて、軸組全体を補強する

これらの工夫により、構造的に強い木造建築が初めて可能となった。

ちなみに建築基準法では、木造建築物についてさまざまなルールを設けているが、これらのルールの前提として想定されているのはこの「在来工法」である。

小屋組や床組の荷重を二点支持により水平や斜めの状態で支える横材のこと。

柱などと連結して、上方からの荷重を鉛直方向に流し、地面に力を伝える重要な構造部材である。

枠組壁工法

木材でつくった枠に、構造用合板等を釘で打ち付けて、壁・床・屋根を形成する工法。
壁そのものが垂直方向と水平方向の強度を持つ点に最大の特徴がある。
本来は北米で生まれた工法だが、わが国では1974(昭和49)年の建設省告示により自由に建築できるようになった。

「ツーバイフォー工法(2×4工法)」と呼ばれることもある。

石膏ボード

石膏を心材とし、両面をボード用原紙で被覆した板のこと。
施工が簡単で、温度・湿度による変化が非常に少ないことから、壁材、天井材(あるいは壁・天井の下地材)として多用されている。

間仕切り壁

建築物の内部空間を仕切るための内壁のことであり、室と室とを区画する壁のことである。

間仕切り壁は、耐力壁(地震力、風圧力に対抗する壁)である場合もあれば、そうでない場合もある。

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