手付|不動産用語集
手付(てつけ)
売買契約・請負契約・賃貸借契約などの有償契約において、契約締結の際に、当事者の一方から他方に対して交付する金銭などの有償物のこと(民法第557条・第559条)。
手付には交付される目的により、解約手付、証約手付、違約手付の3種類がある。民法で手付とは、原則的に解約手付であるとしている。また一般に取引において交付される手付の大半は解約手付であると考えてよい。
宅地建物取引業法では、消費者保護の観点から、売主が宅地建物取引業者である場合にはその売買契約で交付される手付は解約手付とみなすという強行規定を設けている(宅地建物取引業法第39条第2項)。これを解約手付性の付与という。
なお、契約に従って当事者が義務を履行したとき、手付は代金の一部に充当される。
関連用語
- 手付の額の制限
- 売主が宅地建物取引業者である宅地建物の売買契約を締結するとき、手付は、代金の額の10分の2を超えてはならないという制限のこと(宅地建物取引業法第39条第1項)。
手付とは、売買契約・賃貸借契約・請負契約などが締結されるに際して、当事者の一方が相手方に交付する金銭等のことである。
この手付が高額であると、買主としては手付を放棄して売買契約を解除することが難しくなり、売買契約の拘束力が不当に高くなってしまう。そこで、宅地建物取引業法では、売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者以外の者である場合には、手付は代金の2割を超えてはならないという制限を設けている(宅地建物取引業法第39条第1項)。ただし、この第39条は一般消費者保護の規定であるので、この制限は売主が宅地建物取引業者で、買主が宅地建物取引業者以外の者である場合にのみ適用される。
仮に、代金の「3割」の手付を買主が支払った場合には、2割を超えた部分(つまり1割)は手付ではなくて、代金の前払い(内金または中間金)であると考えることになる。
なお、この手付の額の制限は、強行規定であるので、これに反する特約で、買主に不利なものは無効となる(宅地建物取引業法第39条第3項)。
用語解説
請負契約
当事者の一方がある仕事を完成することを、相手方がその仕事の結果に対して報酬を支払うことをそれぞれ約束する契約。例えば、住宅の建築工事、洋服の仕立て、物品の運搬などの契約がこれに該当する。
請負契約の目的は、仕事の完成であって労務の供給ではないから、仕事の目的物が定まっていて、通常は、目的物を引き渡すことで仕事が完成する。
請負契約については民法に一般的な規定がある。また、たとえば建設工事の契約に関しては建設業法、運送契約については商法等のような特別法の適用がある。
民法は、
1)請負契約による報酬は目的物の引渡しと同時に支払わなければならないこと
2)引き渡した目的物が契約不適合の場合には、注文者は、補修等の追完請求、報酬減額請求、損害賠償請求、契約解除をすることができること(ただし、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図等によって生じた不適合を理由にすることはできない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。)
3)契約不適合による請求等をするためには、原則として、不適合を知った時から一年以内にその事実を通知しなければならないこと
4)請負人が仕事を完成しない間は、注文者はいつでも損害を賠償して契約を解除できること
などを定めている。
なお、民法には、請負人の担保責任の存続期間について特別の定めがあったが、民法(債権関係)改正(施行は2020年4月1日から)によって削除された。ただし、住宅の新築工事の請負に関しては、特定の部位についての契約不適合責任の存続期間は10年とされている(住宅の品質確保の促進等に関する法律)。
違約手付
手付の一種で、債務不履行が発生した場合には、手付が没収される(または手付の倍額を償還する)という手付のこと。
例えば、売買契約において買主が違約手付1万円を交付したとき、買主に債務不履行(代金支払義務の不履行)が発生すれば、その1万円は没収される。反対に、売主に債務不履行(引渡し義務の不履行)が発生すれば、売主は買主に2万円を償還しなければならない。
このような違約手付は、損害賠償額の予定と解される。
わが国では、手付とは原則として解約手付とされているが、解約手付であると同時に違約手付であってもよいとされている。
宅地建物取引業法
宅地建物取引の営業に関して、免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を定めた法律。1952年に制定された。
この法律に定められている主な内容は、宅地建物取引を営業する者に対する免許制度のほか、宅地建物取引士制度、営業保証金制度、業務を実施する場合の禁止・遵守事項などである。これによって、宅地建物取引業務の適正な運営、宅地および建物の取引の公正の確保および宅地建物取引業の健全な発達の促進を図ることとされている。
売主
不動産の売買契約において、不動産を売る人(または法人)を「売主」という。
また不動産広告においては、取引態様の一つとして「売主」という用語が使用される。
この取引態様としての「売主」とは、取引される不動産の所有者(または不動産を転売する権限を有する者)のことである。
宅地建物取引業者
宅地建物取引業者とは、宅地建物取引業免許を受けて、宅地建物取引業を営む者のことである(宅地建物取引業法第2条第3号)。
宅地建物取引業者には、法人業者と個人業者がいる。
なお、宅地建物取引業を事実上営んでいる者であっても、宅地建物取引業免許を取得していない場合には、その者は宅地建物取引業者ではない(このような者は一般に「無免許業者」と呼ばれる)。