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お住み替えコラム
2024.01.29
不動産の売買契約には非常に重要な条項として、「瑕疵担保責任」があります。売買の対象不動産に買主にとって許容できない欠陥や不具合などがあった場合、売主が責任を持って対応することを定めた条項です。
2020年4月の民法改正により、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に変更され、売主の義務や買主の権利行使などの点が改められました。
この記事では、瑕疵担保責任の変更点を説明したうえで、不動産取引における4つの瑕疵についても詳しく解説します。また、契約不適合責任に関わるトラブル を起こさないための対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
2020年4月の民法改正で、瑕疵担保責任が契約不適合責任に変更されたことにより、売主の責任はより大きく明確になりました。この変更により、買主を保護する仕組みが確実になったと言えます。
ではどのような変更が行われたのか、その違いを確認していきましょう。
項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
売主が負う責任の性質 | 瑕疵担保責任(法定責任) | 契約不適合責任(契約責任) |
責任を負う対象や範囲 | 隠れた瑕疵(気づかない欠陥) | 売買対象の種類・品質・数量などが契約内容と異なるもの |
買主が満たす要件 | 買主は善意であり無過失である | 買主の善意や無過失は問わない |
売主が満たす要件 | 故意や過失がなくても責任を負う | 損害賠償以外は売主に対する帰責事由は不要 |
買主の追完(修補)請求権 | なし | あり |
買主の代金減額請求権 | なし | あり |
買主の損害賠償請求権 | あり | あり(ただし売主に対する帰責事由が必要) |
買主の解約解除権 | あり | あり |
損害賠償の範囲 | 信頼利益の範囲 | 履行利益まで含む |
契約解除の要件 | 契約目的を達することができない場合に解除できる | 契約不適合の内容が軽微でなければ解除できる |
買主の権利行使の有効期間 | 瑕疵を知ってから1年以内に権利行使が必要 | 契約不適合を知った時から1年以内に通知すれば権利行使はあとでよい |
瑕疵担保責任という概念には、不動産にはまったく同じものはなく、性質上、契約対象物にもともと欠陥があっても完璧な履行を求めることができないため、売主は買主が過失なく知り得なかった欠陥について信頼利益の範囲で責任を負えば 、契約は履行されたとみなすという考え方があります。
「信頼利益」とは、本来無効となる契約を有効に成立したと信じたことによって債権者が受けた損害のことを指します。
信頼利益の典型例は、契約書に貼付した収入印紙代です。他方、不動産売買が成立することを見込んだ転売益といったビジネス上の逸失利益に関しては、信頼利益の範囲を超えるものと考えられています。
瑕疵担保責任は不動産売買契約の債務不履行ではないという考え方を前提にすると、多額の賠償責任を売主に負わせることは妥当ではないため、逸失利益の損害賠償請求は基本的には認められません。
しかし、たとえまったく同じ不動産がなく交換できないとはいえ、買主は不動産売買契約上、契約の目的に適合する不動産の引き渡しを受ける権利があります。引き渡しを受けた不動産が契約の目的に適合しないと判断した場合は、売主は債務不履行に基づき契約不適合責任を負うということが改正民法の考え方と言えるでしょう。
瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更され、改正前民法では認められていなかった買主による責任追及手段として「追完(修補)請求権」と「代金減額請求権」が追加されました。
また、「損害賠償の範囲」と「契約解除の要件」も大きく変更されました。
これら4つの変更点について以下の項で詳しく解説します。
民法改正により、新たに追加された買主の責任追及手段は「追完 (修補)請求権」と「代金減額請求権」です。買主は改正前民法では「隠れた瑕疵」があったとしても、売主に債務不履行を主張することはできませんでした。
また、瑕疵を理由にその瑕疵に相当する売買代金の減額を請求することもできず、売主に対し、欠陥のある部分の修補(修繕)を求めることもできませんでした。
つまり、改正前民法においては目的物に欠陥があった場合、買主は契約の目的を達成できない場合に売買契約の解除を申し出ることのほか、損害がある場合には信頼利益の範囲内でのみ損害賠償請求ができるに過ぎませんでした。
なお、ここで記載した信頼利益とは前述したように、売買契約が正当に行われることを前提として支払った、収入印紙代や住宅ローンの保証料など契約するための準備費用が該当します。
しかし民法改正後、売主は契約不適合責任を負うため、引き渡された物件に欠陥があるなど契約内容と異なることに対し、買主は契約内容に適合させるよう売主に請求することができるようになりました。これを「追完(修補)請求」と言います。
さらに履行の追完(修補)を請求したにもかかわらず、売主が対応してくれないとき、あるいは追完(修補)を請求しても売主に 応じる見込みがない場合は、買主は売主に対して売買代金の減額を請求することができます。これを「代金減額請求」と言います。
例えば売主が修繕すべき部分があり追完 (修補)請求したにもかかわらず、修繕しない場合などに代金を減額するよう請求できるようになりました。
民法改正により変更された事項は以下の2点です。
それぞれ順番に解説します。
改正前民法では、売主に対し損害賠償請求できる範囲は「信頼利益」までと解釈されていました。しかし改正後は「履行利益」まで請求可能となりました。
「信頼利益」と「履行利益」が指す意味は以下のとおりです。
つまり、民法改正後は「信頼利益」だけではなく「履行利益」までが対象となり、買主の損害賠償請求できる範囲が広くなったと言えるでしょう。
一方、 損害賠償について改正前は売主に過失がなくとも請求可能でしたが、民法改正後は、契約不適合責任が債務不履行責任と位置づけられたことにともない、損害賠償は売主に故意または過失がある場合に可能となっています。ただし、売主が契約不適合について無過失であることを立証できた時にはこの限りではなく、損害賠償請求はできません。
民法改正前は、買主が契約目的を達することができない場合は契約解除が可能でした。
しかし民法改正後は、買主に追完 (修補)請求や代金減額請求の権利が追加されたため、契約不適合の内容が軽微であれば、契約の目的を達する可能性が高くなります。そのため契約不適合の内容が軽微でなく、契約の目的を達することができない場合に契約解除が可能となりました。
契約解除は買主にとってもダメージが大きいものでしたが、追完(修補)請求や代金減額請求によって契約解除に代わる買主の保護が期待できるようになったといえるでしょう。
瑕疵担保責任から契約不適合責任への変更により、責任範囲と権利行使の期間が改められました。
改正前は、隠れた瑕疵について売主は瑕疵担保責任を負うこととなっていました。しかし改正後は、隠れた瑕疵に限らず契約内容に適合しない部分が対象不動産にある場合は、売主の責任として契約内容に適合させる義務が発生します。
これにより買主は、契約内容に適合しない場合、例えば入居後に雨漏りがあり調査の結果、以前から屋根に不具合があったことが判明し売主に修繕するよう追完(修補)請求することや、修繕費用に見合う代金減額請求を行うことができるようになりました。
さらに、改正前の瑕疵担保責任期間は権利行使の期間を制限しており、民法の定めでは引き渡しから1年間としていました。しかし改正後は契約不適合といえる欠陥があった場合、知った時から1年以内に買主は売主に通知するだけでよく、権利行使、つまり修補請求などは1年過ぎても可能になっています。
ただし、権利行使には消滅時効があるので無期限ではないため注意が必要です。
このように、民法改正によって買主の権利は手厚く保護されるようになり、売主の責任が大きくなったと理解しておくと良いでしょう。
不動産取引で使われる「瑕疵」とは、主に建物の欠陥や、契約内容に適合しない事象のことを指します。
「隠れた」とは故意または過失によって「気づかない」といった意味であり、通常の注意力では知り得ない欠陥を指します。瑕疵には次の4つの種類があります。
契約不適合責任として問われるケースの中で、民法改正にともない売主の責任はむしろ厳しくなったとも言えます。ここからは、売主としてトラブル防止のため、心がけるほうが望ましいと思われるポイントを次の4つ にわけて紹介します。
順番に見ていきましょう。
物件状況報告書に記載すべき事象を記載しなかった、あるいは誤った記載をしてしまった場合など、物件状況報告書の記載内容によっては契約不適合責任を問われる可能性が高くなります。
物件状況報告書を作成する際は、買主の立場を考えながら現状をありのままに、漏れがないよう正確に記載することを心掛けましょう。
売主の認識不足などにより正常に作動するはずの設備が作動しなかったなど、引き渡し後の短い期間で瑕疵を指摘されるケースも少なくありません。
築年数が経過し、劣化が進んでいる物件であっても、契約不適合責任を負う範囲を定めて買主が瑕疵を発見し通知するまでの期間を「〇ヶ月間 」とするなど、不動産売買契約の特約条項を検討することが望ましいでしょう。
既存住宅状況調査技術者による建物状況調査であるインスペクションを実施し、劣化や不具合など欠陥とみなされる事象を明確にすることにより、引き渡し後のトラブルを未然に防止することが可能です。
また、要件を満たす場合は既存住宅瑕疵保険への加入もおすすめです。引き渡し後のトラブル防止および契約不適合責任に基づく修繕の負担軽減にもなります。
不動産売買でトラブルを発生させない方法として重要なことは、媒介する不動産仲介会社の選択です。
売主や買主への丁寧な説明や立場・事情を勘案した心配りなど、不動産取引において満足した結果を得られるかどうかは、不動産仲介会社や担当者次第であるともいえます。
トラブルのない不動産取引を実現するためにも、信頼のおける不動産仲介会社に依頼することをおすすめします。
民法改正により瑕疵担保責任から契約不適合責任へと変更され、不動産取引において曖昧だった不動産の欠陥に関わる責任がより明確となりました。
法改正により、不動産取引で生じるトラブルはある程度防止できると考えられます。さらに以前の瑕疵担保責任に基づく買主の権利行使期間が延長され、より買主保護の性格を持つようになりました。
一方、民法改正前からの不動産取引における4つの瑕疵については売主が責任を負うこと自体は変わっていません。そのため、法改正前同様に物件状況報告書などで買主に不動産の状況を正確に報告する必要があります。
引き渡し後のトラブルを防止する対策としては、インスペクションの実施や既存住宅瑕疵保険への加入のほか、信頼できる不動産仲介会社への仲介の依頼が有効です。
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