簡易型耐震診断法|不動産用語集
簡易型耐震診断法(かんいがたたいしんしんだんほう)
2011(平成23)年の「東日本大震災」、2016(平成28)年の「熊本地震」など、大地震の発生を受けて、「住生活基本計画」(2021(令和3)年3月閣議決定)および「国土強靭化年次計画2023」に従い、国土交通省では、「令和12年までに耐震性が不十分な住宅、令和7年までに耐震性が不十分な耐震診断義務付け対象建築物をおおむね解消する」との目標を掲げ、建築物所有者による耐震化を支援している。
その第1歩となる耐震診断の実施については、一般にはなじみにくく、ある程度の費用も予想されることから、この普及のために地方公共団体や(一財)日本建築防災協会などにおいて相談窓口を設け、また地方公共団体等によっては、費用を助成することなどにより、耐震診断の普及促進が図られている。
日本建築防災協会では、同協会耐震診断WEBサイト「耐震支援ポータルサイト」に「誰でもできるわが家の耐震診断」と題して、例えば建築時期が新耐震基準施行(1981年6月)以前か以後か、今までに大きな災害に見舞われたことがあるかなど、簡単なQ&A方式による耐震診断ツールを提供している。
また、同協会においては、国土交通省の依頼を受け、新耐震基準導入後の木造建築について被害が少ないことに鑑み、まず、建物所有者等がスクリーニング的に耐震性能を確認する「所有者等による検証」と、専門家が、現地調査を行なわず図面や所有者等による調査の結果を活用し一般的な診断法に準拠した方法で耐震性能を確認する「専門家による効率的な検証」の、2段階の診断方法を検討・作成している。
このほか、同ポータルサイトでは、信頼できる専門家、事業者、団体についても情報提供をしており、耐震診断に対する関心の高まりを悪用したリフォーム詐欺などの発生の予防も図っている。
用語解説
耐震診断
建物が地震に対して安全であるかどうかを調査・判断する作業。耐震診断によって明らかになった耐震性能が耐震基準を満たさないときには、耐震改修が必要とされている。
耐震診断の方法は、建物の構造、規模や用途、調査の難易などに応じて決定する。また、耐震性能は、構造体の耐震強度や塑性変形能力のほか、建物の形状、経年劣化の程度などを加味して評価する。
地方公共団体
地域における行政を自主的、総合的に実施する役割を担う団体。その組織、運営、財務などについては、憲法の規定に基づき、地方自治法等によって定められている。
普通地方公共団体である都道府県・市町村と、特別地方公共団体である特別区・地方公共団体の組合・財産区の二種類に分類され、いずれも法人である。また、市町村は、地域の事務を一般的に処理する基礎的な地方公共団体である。
地方公共団体は、地方自治の本旨に基づいて組織し、運営しなければならない。この場合、地方自治の本旨とは、「団体自治」(国から独立した地域団体によって自己の事務を自己の機関・責任で処理し、国家から独立して意志を形成すること)および「住民自治」(住民が行政需要を自らの意思・責任によって充足し、意志形成において住民が政治的に参加すること)であるとされている。
新耐震基準
建築物の設計において適用される地震に耐えることのできる構造の基準で、1981(昭和56)年6月1日以降の建築確認において適用されている基準をいう。
これに対して、その前日まで適用されていた基準を「旧耐震基準」という。
新耐震基準は、震度6強~7程度の揺れでも倒壊しないような構造基準として設定されている。技術的には、地震力が加えられた場合の構造部材に生じる応力が許容応力以下であるだけでなく、一定以上の規模の建物については、靱性(粘り強さ)を確保することが求められる。また、建物強度のバランスも必要とされる。
なお、旧耐震基準は、震度5強程度の揺れでも建物が倒壊しないような構造基準として設定されていた。
木造
建物の主要な部分を木材とした建築構造のこと。
木造の工法は、大きく分けて「在来工法」「伝統工法」「枠組壁工法」に分類されている。
リフォーム
建物の構造強化、機能向上などを図るための改修をいう。リフォームの種類には、耐震化、バリアフリー化、省エネルギー化、耐久性向上化などのための工事がある。
リフォームへのニーズは、既存建物の有効活用、既存住宅流通の活性化、良質な住宅ストックの形成などの要請によって、今後高まっていくと考えられている。また、これを促進するためのリフォーム減税が措置されている。
一方で、リフォームは、その目的や内容が多様で幅広いこと、リフォーム前の建物の状態がさまざまであることなどの特徴がある。そのため、リフォームのための技術・技能や費用を標準化するのが難しい。また、リフォームによって高まるであろう不動産価値を評価する手法は十分に確立されているとは言い難く、リフォームを不動産価格に反映するしくみも十分ではない。リフォームに対するニーズに応えるためには、これらの課題に取り組まなければならない。